研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
23127503
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
猪早 敬二 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (70302958)
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キーワード | 発生・分化 / メダカ / 骨形成 / 脊椎発生 / 分節性 |
研究概要 |
当該年度は、脊椎の分節性に異常を示すメダカ突然変異体の1つである、fused-4(fu-4)変異体の原因遺伝子の同定を行った。fu-4は脊椎骨が融合し、体長が短くなるという表現型を示す自然発生突然変異体である。しかしながら、発生過程を詳細に観察した結果、胚発生期において体節の分節性が乱れ、左右非対称な体節が形成されることが本研究で初めて明らかとなった。また、fu-4変異体の原因遺伝子を同定するためにポジショナルクローニングを行った結果、体節の分節的な構造をつくるために必須であるher7遺伝子にナンセンス変異があることが分かった。さらに、モルフォリノオリゴによるher7遺伝子のノックダウン実験および野生型her7遺伝子を顕微注入することでfu-4表現型のレスキュー実験を行った結果、fu-4変異体の原因遺伝子はher7遺伝子であると結論した。 従来、脊椎の分節は胚発生初期の体節の分節性に依存するとされてきたが、体節の分節性に依存しない脊椎分節機構の存在が、ゼブラフィッシュを用いた最近の報告から示唆されている。すなわち体節から分化した骨芽細胞は、体節の分節性にとらわれることなく、自発的に秩序ある脊椎の分節パターンをつくり出すと考えられる。しかしながら本研究の成果から、メダカにおいては、マウスやニワトリなどの高等脊椎動物と同様に、脊椎の分節は胚発生期につくられた体節の分節性に依存することが強く示唆された。メダカとゼブラフィッシュは同じ硬骨魚類に属するにもかかわらず、このように分節形成メカニズムが異なるということは、脊椎動物の進化を考える上でも非常に興味深く、議論を呼ぶ成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画としては、脊椎の分節性に異常を示す2種類の変異体の原因遺伝子を特定することを掲げた。既に、1つの変異体に関しては原因遺伝子の同定に至っており、またもう一つの変異体に関しても、その原因遺伝子をメダカゲノムのある特定の領域にまで絞り込むことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も実施計画に沿って、本研究を推進する。 特に研究計画の変更はない。
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