研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
23127507
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (70506766)
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キーワード | Cerberus like2 / 左右 / 0.9999 / mRNA |
研究概要 |
脊椎動物の心臓、胃、肺、腸等の内臓臓器の形態は左右非対称である。内臓臓器の左右非対称性は、高度に保存された遺伝子カスケードで正確に決められており、マウスでは左右決定を間違う確率が1万匹に1匹、つまりCanalizationの値は99.99%と非常に高い。マウス胚の左右決定では、まず体の中心に位置するノードで右から左への水流が起こる。その結果、ノードの左右両脇に存在する約30個ずつのcrown cellと呼ばれる細胞で、Cerberus/DANファミリーに属する分泌因子Cerl2のmRNAが、右側で左側よりも多く発現する。現在までの研究から、crown cell内のCerl2 mRNAの局在を観察すると、細胞膜に強く局在している事が明らかになった。さらにノード流を受けた部分の膜に存在するCerl2 mRNAの量が減少している事を明らかにした。そこで、300bpの短い特殊な配列を挿入した改変Cerl2遺伝子を作成した。このレポーター遺伝子をBACのCerl2遺伝子領域と置き換えて、マウス受精卵にインジェクションし、胚を回収して300bpに対する蛍光In situ hybridizationを行って局在を観察した。同時に上記のBACコンストラクションからCerl2のイントロン又はUTRを欠失させ、膜のテンショ変化を感知し細胞内局在に重要な部位を同定した。Cerl2のmRNAのdeletion解析を行ったところ、Cerl2の3'UTRとintron領域が、Cerl2のmRNAの安定性をコントロールする事で、Cerl2 mRNAの量を変化させている事がわかった。さらにCerl2の3'UTRを欠いたトランスジェニックマウスでは、Cerl2の膜付近の局在が左右ともに強くなっていた。現在、3'UTRに結合する蛋白を同定中であり、候補蛋白を2つに絞った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cerl2 RNAの安定性をコントロールする部位を、トランスジェニックマウスの解析から同定した。さらに、同定した部位に結合する蛋白質をほぼ同定しており、目的であるCerl2の安定性コントロールを行うメカニズムはほぼ明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
超高感度センサーの仕組みと振る舞い、センサーが間違う確率を解析するために、センサーの動作を直接観察する。BAC(Bacterial Artificial Chromosome)を利用したトランスジェニックマウスで、Cerl2の転写量をLuciferaseを用いて、Cerl2 mRNAの細胞内での振る舞いをMS2-GFP蛋白を用いてリアルタイムに定量する。これよりセンサーへの入力値、揺らぎ、誤動作する確率を解析する。その後、ノイズを含むダイナミックシミュレーションと実験から揺らぎの原因を解明する。また、ノード流が細胞膜に与える張力と膜付近でのRNA分解機構を、PIV解析とmRNAのイメージングで明らかにし、センサーへの入力を解明する。
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