研究領域 | ミクロからマクロへ階層を超える秩序形成のロジック |
研究課題/領域番号 |
23127511
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高松 敦子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20322670)
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キーワード | パターン形成 / 運動性シアノバクテリア / 群れ / 集団運動 |
研究概要 |
運動性シアノバクテリア細胞は集団化することで、円盤形の回転型運動や彗星型運動など様々なマクロ構造をとる。このような集団運動系の数理的取り扱いは、鳥や魚の群れから自動車の渋滞まで自己駆動粒子系モデルを用いて様々な取り組みが成されてきた。数理モデル系を用いる利点は、制御パラメータを動かすことで実環境では実現困難な条件下の振る舞いを予測できることにある。しかし、動物の群れや自動車集団ではパラメータを制御するのは困難である。そこで本研究では環境が比較的制御しやすい運動性シアノバクテリアをモデル生物とする。 H23年度は、標準環境下において、束状、円盤状、彗星状のそれぞれの集団形態の運動解析を行った。その結果、バクテリア密度が高いほど運動生が優れいてることを見いだした。形状毎にみると、束状のバクテリアは比較的細胞集団の規模が小さく最大密度、最大運動速度も比較的小さい。この形状のバクテリア集団にさらに多くのバクテリアが集まると回転運動する円盤状または並進運動する彗星状へと遷移する。シアノバクテリアは環境中の栄養分をアミノ酸に分解する酵素を放出すると言われているが、集団形成することで孤立した状態よりも効率的に栄養分摂取が可能になると考えられる。恐らく、重心位置の移動しない円盤状集団の回転運動は、細胞増殖に貢献すると思われる。しかし、固定した位置での栄養分量には限界がありやがて細胞集団の一部は円盤状集団から剥離して彗星状となる。この形態になるど、並進運動へと切り替わり、並進運動速度は他のどの形態よりも大きくなるので、より良い環境へと移動するのに有利であると考えられる。以上のように、運動生シアノバクテリアが形成する様々な集団形態と遷移についての生物機能について考察を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、マイクロ構造物を利用して1次元環境でのシアノバクテリアの運動性を評価する予定であったが、実験セットアップが予想外に難しく、今年度は標準環境の自然に形成するパターンの運動性解析とその評価に集中した。 しかし、その結果、バクテリア集団の各形態の生物学的機能についての考察が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度では、運動生シアノバクテリアが自発的に形成する複数のパターンとそのパターン間の遷移現象を見いだした。H24年度では、パターン形成の数理モデル化と、遷移現象のメカニズムについて理論的考察を行い、将来的には他の多細胞系へも適用できる汎用モデルの構築を目指す予定である。
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