研究概要 |
細胞集団の協調的振る舞いが引き起こすパターン形成として、ショウジョウバエ胚の卵巣形成に注目した。ショウジョウバエ胚の卵巣はprimordial germ cells (PGCs) とsomatic gonadal precursors (SGPs)から構成され、器官のかたちがラグビーボール型からサッカーボール型に変化する。この器官の大規模な形態変化はSGPsのみで構成される卵巣でも正常に進行することから、SGPが主要な役割を果たすことがわかっていたが、そのメカニズムはほとんどわかっていなかった。我々は、細胞接着面の張力をレーザー切断法により評価し、SGP-SGP間の張力がSGP-medium間に比べて相対的に小さいことを示した。さらに、実験結果を取り込んだ細胞集団変形の力学過程の数値計算を行い、SGP-SGP間の細胞接着力の増強がサッカーボール型の器官形成に十分であることを確認した。すなわち、SGP-SGP間の細胞接着力が増強することでSGP-SGP接着面が増えるような細胞再配置が駆動され、サッカーボール型の器官形成が達成されることが明らかになった (Sano et al., 2012)。 ショウジョウバエ蛹期腹部上皮のヒストブラストによる幼虫期上皮細胞の置き換えにおける細胞集団間相互作用についても解析を進めた。力の推定法を用いてヒストブラストと幼虫期上皮細胞の界面における細胞間力学相互作用を定量化した。また、細胞集団のレーザー破壊実験から、組織の応力の異方性の発生変化を評価した。
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