研究概要 |
本研究では、キューバに生息するアノールをモデルとして体温適応という生理機能や行動形質などが複雑に関運して決まる複合適応形質の進化遺伝基盤の解明を目指す。 8月22日から9月5日の期間、キューバ西部にて体温の異なるアノールトカゲ3種(Anolis sagrei,A.homolechis,A.allogus)のサンプリングを実施した。生きた個体を研究室へ送付後、環境に慣らすため一ヶ月間飼育を行った。その後、3種を用いた5日間の温度維持実験を実施した(それぞれ4個体,26度と33度。このうち体温差の大きい2種(A.sagrei,A.allogus)の各組織(皮膚、肝臓、脳)からtotal RNA抽出した(合計48サンプル)。次世代シークエンサー(Illumina HiSeq)を用いたトランスクリプトーム解析を行うためライブラリ作成を行った(現在、24サンプル完了)。 また、温度感受性遺伝子であるTRPなど異なる温度への適応に関わる候補遺伝子の塩基配列を調べるため、上記アノールトカゲ3種の全ゲノム配列決定を行った。3種のアノールトカゲからゲノム抽出を行い111uminaHiSeq用のライブラリを作成した。 今後、得られたアノールトカゲ3種のゲノム配列より温度感受性遺伝子(TRP遺伝子ファミリー)をクローニングし、これら遺伝子の感受性温度とアノールトカゲ3種の体温差に相関があるか機能を調査する。また、トランスクリプトーム解析から得られた温度に反応する候補遺伝子と、これまで温度適応に関わると考えられてきた遺伝子のシス領域を含むDNA配列を決定し、自然選択の働いた領域の検出を行う。ここで得られた結果に基づき、体温適応という生理機能や行動形質などが複雑に関連して決まる複合適応形質の進化機構解明を行う。
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