研究領域 | 複合適応形質進化の遺伝子基盤解明 |
研究課題/領域番号 |
23128506
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒岩 厚 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20134611)
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キーワード | 四肢形成 / 転写調節 / エンハンサー配列 / 進化 / Fgf10 / 肢芽 / 予定肢芽領域 / ゼノパス |
研究概要 |
(1)進化過程におけるエンハンサー配列の獲得と変容 ゾウギンザメおよびシーラカンスについて、すでにPCRにより分離されていた肢芽間充織エンハンサーR3を持つようなBACクローンを同定し塩基配列解析を行ったところ、羊膜類のFgf10と最も相同性の高いエクソン配列が見いだされた。予定肢芽領域発現制御エンハンサーR2はゾウギンザメでは見いだされなかったが、シーラカンスではコアとなる転写因子の結合部位はほぼ保存されていた。これらの事実から、R3は無顎類から顎口類への進化過程で獲得され、条鰭魚類への分岐過程で消失したこと考えられる。またR2は肉鰭魚類で獲得され無尾両生類で消失したが、羊膜類では保存されていることが判明した。直接発生するコキーコヤスガエルのFgf10 exonlとR3間にはR2が存在せず、幼生期を経るカエル同様の遺伝子構造を持つことが判明した。全領域の塩基配列決定が必要だが、R2が存在しない場合には直接発生ガエルではR2に依存しない様式でFgf10発現の開始を行うシステムが存在する可能性も示唆される。 (2)肢芽形成のヘテロクロニーと肢芽誘導システムの保存性と変容 ゼノパス尾芽胚期で、マウスR2にドライブされたレポーター遺伝子発現を起こす側板中胚葉細胞が、幼生期の肢芽間充織となりうるのかについて、蛍光色素の微細な結晶の尾芽胚期側板中胚葉への移植により解析した。体節7-15の位置に相当する側板中胚葉細胞は後肢芽に見いだされるが、体節5では後肢芽には見いだされなかった。これらの結果から、肢芽間充織がR2レポーター発現を行いうる側板中胚葉というかなり広い領域から生じること、また後肢芽についてはこれらの細胞がその後集合して肢芽を形成することが判明した。この領域について、マウスR2エンハンサーを用いた遺伝子的標識法の確立を目指して研究を展開し、いくつかの条件についての情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたシーラカンス、ゾウギンザメ、コキーコヤスガエルのFgf10ゲノム構造決定が完遂し、エンハンサー同定を行うことができた。ゼノパス尾芽胚で、マウスR2エンハンサー活性を示す領域が予定肢芽領域をオーバーラップしていることを、色素を用いた細胞系譜追跡法で示すことができた。これらについての遺伝子的標識法による解析については、技術的な問題があって成果は十分ではないが、H24年度に完成するめどがついている。
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今後の研究の推進方策 |
羊膜類R2エンハンサーの祖先型と考えられるシーラカンスのR2配列について、生化学的手法とトランスジェニックマウス系でその機能を解析し、四肢の獲得とエンハンサーの関連性について考察を展開する。肢芽形成と肺芽形成との関連性について、R2およびR3標的遺伝子破壊マウスを用いた表現型解析と、トランスジェニックマウスを用いたエンハンサー機能解析により得られた結果に基づいて考察する。マウスR2エンハンサーが機能する、Xenopus尾芽胚側板中胚葉領域について、色素を用いた細胞系譜追跡解析を完成させる。これについては、懸案であった遺伝子的な標識法による細胞系譜の追跡による検証を完成させる努力をする。この系でのマウスエンハンサーの活性化に、羊膜類同様Wntシグナルが必要とされるかについての検討を行う。
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