研究実績の概要 |
本年度も引き続き次世代型シークエンサーによるゲノム解読を進めた。本年度得たリードを加え、新たにde novoアセンブルを行った結果、ネムリユスリカについてはN50スキャフォールド長が264kbのアセンブルデータが得られた。アセンブルデータの評価として、Roche 454 GS FLXによって得たネムリユスリカEST(約76万リード)をマッピングしたところ約92%がマップされた。また、Sanger法で決定したFosmidクローンと本ゲノム配列とを比較したところ、大きなアセンブルミスも無いことが確認された。ヤモンユスリカについてもN50スキャフォールド長が28.3kbのアセンブルデータを得た。 次に、アセンブルデータ上に遺伝子モデルの構築を行った。その結果、ネムリユスリカ、ヤモンユスリカの予測遺伝子数はそれぞれ17,824、17,224となった。予測遺伝子(コーディング領域)のGC含量はそれぞれ0.34、0.49と両者間で顕著な差が見られた。予測遺伝子には既知タンパク質とのホモロジー検索、ドメイン・モチーフ検索を行なってアノテーション情報を付加した。オーソログ解析の結果、ネムリユスリカ遺伝子のうちおよそ75%がオーソログ関係にあるとされた。二年間の研究の結果、乾燥耐性に関連性が高い遺伝子クラスター領域 ARId (Anhydrobiosis-related Island) の同定に至った。LEA遺伝子が水平伝播によって獲得されたxenologであることも明らかとなった。これらのことから、水平伝播による新規遺伝子機能の獲得と高頻度な遺伝子重複がタンパク質の機能の多様性をもたらした結果、ネムリユスリカは乾燥無代謝休眠という複合的な適応形質を進化させたと考えている。
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