研究領域 | 複合適応形質進化の遺伝子基盤解明 |
研究課題/領域番号 |
23128514
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
岩本 政明 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所・バイオICT研究室, 専攻研究員 (80450683)
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キーワード | 核-細胞質間輸送 / importin-β / 核局在化シグナル / 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン / テトラヒメナ / 繊毛虫 / 2核性 |
研究概要 |
単細胞生物の繊毛虫は、大核と小核という機能の異なる2種類の核を持つ。このような2核性の獲得に至った進化過程では、核機能の制御基盤である核輸送系を構成する様々な因子が、お互いの親和性を保ちながら複合的に形質進化したと考えられる。本研究では、2核で使い分けされている核膜孔複合体タンパク質と、それに対応した輸送運搬体ならびに核局在化シグナル(NLS)を同定し、因子間の相互作用の特異性、効率性などを調べることで、繊毛虫の核輸送系に生じた複合適応形質進化を検証する。 23年度は、繊毛虫テトラヒメナがもつ輸送運搬体のimportin-βファミリータンパク質の探索、ならびに核選択的NLSの配列決定を行った。輸送基質を捉え、核内へ輸送する運搬体の主たるものはimportin-βファミリーに属するタンパク質群である。従って、importin-βファミリーには、大核輸送を行うものと、小核輸送を行うものが存在するはずである。そこで、importin-βファミリーと考えられる全てのcDNAをクローニングし、それらのGFP融合体の細胞内局在における核選択性を確認した。その結果、両核に局在するもの、大核特異的に局在するものの他に、これまで知られていなかった小核特異的に局在するものを新たに2種類発見することができた。 一方、大核タンパク質のヒストンH1、ならびに小核タンパク質のMLHから、特異的核局在を可能にしている内部配列の絞り込みを行い、H1から大核特異的NLS活性をもつ部位を2ヶ所、MLHからも小核特異的NLS活性をもつ部位を2ヶ所、同定することに成功した。これらの配列はいずれもNLSのコンセンサス配列とは一致せず、テトラヒメナに特有の配列であることが分かった。 以上の結果から、繊毛虫では、核膜孔複合体タンパク質だけでなく、運搬体ならびにNLSも2核間で明確に機能分化していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核輸送運搬体であるimportin-βファミリーと予想される全ての分子種のクローニングと細胞内局在観察が完了したこと、ならびに大核または小核にそれぞれ特異的に輸送される核局在化シグナルの配列を決定できたことは、当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
核膜孔タンパク質のNup98と核輸送運搬体との相互作用を調べる。大核のNup98、小核のNup98にそれぞれ特異的あるいは優先的に結合するimportin-βを見出し、リコンビナント合成したNup98のFGリピート領域との結合特性を調べる生化学的な解析を実施する予定である。 同時に、大核局在化シグナルまたは小核局在化シグナルを特異的に認識し、核内へ輸送する運搬体を特定するため、それぞれのシグナルをベイトにした共沈実験を行い、回収されたタンパク質画分の解析を行う。
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