公募研究
統合失調症の家系サンプルのうち6人を対象に主に連鎖領域である1p21.2-p13.2、14q11.2-q13.2、20p12.1-q11.2に重点を置いて次世代シークエンサーを使ってエクソーム解析を行った。その結果、連鎖領域では他の領域と比べて挿入変異が有意に多く、また、変異の位置は5'非翻訳領域に多かった。また20Pの領域では非同義置換の割合が有意に多く、これまで知られていない変異の数もとくに20pに多かった。遺伝子産物に影響を与える可能性の高い変異は、1p連鎖領域に3ヶ所、14q連鎖領域に3ヶ所、20pに1ヶ所見つかり、複数のサンプルで同一の変異も存在した。一方、解析した多くの患者で共通の稀なゲノム変異は見つからなかった。現在はまだサンプル数も少なく結論は得られないが、家系により統合失調症に関与する変異の種類が異なることはこれまで予想されたとおりであった。一方、これまで知られていない稀な変異が5'非翻訳領域に有意に多いことは、統合失調症の発症に関わる変異は家系ごとに異なっているとしても遺伝子の発現調節に関与している種類が多いということを示唆しており、これもこれまで統合失調症に関連する遺伝子変異の解析で明らかになったことである。本研究はエクソーム解析は解析数は少ないながらも統合失調症の発症に関わる変異群の特徴を示すデータを産出する力を持っていることを示すとともに、次世代シークエンサーを使った解析が統合失調症においても患者一人ひとりで関与する変異が異なるパーソナルゲノム解析に役立つツールであることを示している。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーの立ち上げにやや時間がかかり、解析したサンプル数が少数にとどまっている。
最大のハードルである次世代シークエンサーによる解析が軌道に乗ったので今後はサンプル数を増やすことにより、目的を達成できるものと予想される。
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American Journal of Medical Genetics
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