公募研究
本研究では原因未同定の常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症(以下、未同定SCAと略)の原因を解明するためにポジショナルクローニングを行った。まず、家系の規模が大きい5家系について1塩基多型(SNP)マーカーを搭載した最新鋭DNAマイクロアレー(Affymetrix Genome SNP6.0)を用いてゲノタイピングを行いソフトウエアーAllegro等を用いて連鎖解析を行った。その結果、最も大きな単一家糸で連鎖を否定できない染色体領域が4つ検出された。さらに臨床的に類似する残る3つの家系を加味すると、その領域が更に限定化された。次に東京大学ゲノムセンター(東京大学神経内科辻省次教授)の御協力を得て、5家系発症者合計10名について、全ゲノムのexome sequencingを行っていただいた。十分なカバレッジを示す有効なシークエンス解析を行うことができた.その結果、dbSNPなどの公的データベースになく、かつ翻訳領域内で非同義性置換と判断できた新しい遺伝子変化を各検体で300個程度発見した.家系ごとにその意義を検定した場合発症者に共通する遺伝子変化を探すと100個程度ずつに絞られ、さらに臨床的に共通する4家系で一致するものを探すと、2つに限定された。このうち、先の連鎖解析で連鎖が否足できない染色体領域に存在する遺伝子変化が1つあり、その意義を検証した。今年度終了時点で、多数の検体でその遺伝子変化の意義と、未同定SCAを発症する原因になるかどうかの検証を進めた。一方、未同定SCAの原因解明には、それに相当する疾患患者を増やし、より確からしい遺伝検索を行うことが必要である。我々は、当研究機関に依頼のあったSCA患者のゲノムDNAを、依頼者(当該患者)の同意を得て遺伝子解析を進めた。その結果、研究開始当初より多い50家系の集積を果たすことができた。また、その過程で新しく希少な遺伝子変異をITPR1遺伝子に同定し、日本人類遺伝学会の学会誌に誌上報告することができた。さらに、新しく発見されたSCA36遺伝子の変異も同足することができ、現在その結果は論文執筆中である。以上の経緯で未同定SCAの原因探索を進めることができた。来年度は2年度になり、更にその成果を進めて原因の道程を果たしたい。
2: おおむね順調に進展している
申請時の記載通りの進捗と言えるため。
文部科学省ゲノム支援の支援などを受けて研究を促進させたい。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
J Hum Genet
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10.1038/jhg.2012.5
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PMID:22049201
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