研究実績の概要 |
次世代シークエンサを用いた単一の家系のみの稀少遺伝性疾患の解析に際し、連鎖解析を絞り込みの決め手とし、エクソーム解析と併用すること(連鎖・エクソームアプローチ)を考え、本態性高CK(クレアチンキナーゼ)血症家系に応用した。常染色体優性の本疾患家系の発症者5名を含む4世代計9名を用いてHuman OmniExpress BeadChipによる連鎖解析を行った。その結果、1、7、10、19番染色体にLOD値1.40~1.50の領域を見出し、連鎖候補領域とした。次に、発症者と家系内非発症者各1名につきSureSelectVer4およびGAⅡxによるエクソーム解析を行った。その結果、発症者でのみ見られた新規の変異を65,180個見出した。この中から連鎖候補領域内に、かつ候補遺伝子内に存在し機能変異であるとういう条件で絞り込みを行った。その結果、発症者のRYR1遺伝子の中に、これまでに報告のない非同義置換をヘテロ接合型として見出した。本変異の機能への影響をPolyphen-2で検討したところ0.911を示し、possibly damagingの評価であった。さらに、サンガーシークエンスにより本変異について、家系内における共分離を確認した。日本人健常者520人に同変異は認められなかった。筋組織におけるRYR1の発現を細胞免疫染色とウェスタンブロッティングで検討した結果、患者検体でRYR1抗体による染色像が見られず、またウェスタンブロッティングにおいても該当するバンドの濃度が著しく減少していた。本変異はRYR1のセントラルドメインに存在しており、近傍には悪性高熱症に関与している変異が報告されている。本受容体は4量体で機能するため、本変異により優性阻害が起きたものと考えられた。以上から、上記非同義置換が本疾患の責任変異であると結論した。
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