研究領域 | パーソナルゲノム情報に基づく脳疾患メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23129505
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
工藤 純 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80178003)
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キーワード | エキソーム解析 / 核酸 / バイオテクノロジー / GC含量 / ゲノム |
研究概要 |
核酸ビーズを用いてエキソン領域由来ゲノムDNA断片をハイブリダイゼーションにより濃縮するシステム"エキソーム解析法"が開発された。これにより効率的にヒト全遺伝子のタンパク質コーディング領域の解析が可能となり、実際にヒト疾患原因遺伝子の同定が報告されている。しかし、全てのエキソンを完全に解読できていないことから、本研究では解読困難領域の同定とその原因考察及び解読法の開発を試みた。 複数のエキソーム解析の結果を比較した所、10%程度の共通した解読困難領域が存在していた。この解読領域のGC含量とエキソームで用いられているベイト領域のGC含量を比較した結果、GC含量の高い領域が解読困難領域であることが判明した。PCR法を用いない全ゲノムシーケンシング法ではこれらの領域が解読困難領域となっていないことから、エキソーム解析法での解読困難領域が生じる原因はシーケンシングの問題ではなく、ライブラリー作成時のPCR工程の問題であると示唆された。 このライブラリー作成時にPCR工程で起こる高GC含量による増幅バイアスを解消するために、Aird等の報告を参考にPCR条件を検討した。ゲノムDNAを切断後Agilent社SureSelect及びSureSelectXT、前述のAird等の条件でPCRによる増幅を行った後、各々のPCR産物を鋳型として解読困難領域を対象とした定量PCRを行ない、増幅効率を解析した。その結果、SureSelect,SureSelectXTでは、GC含量が60%を超えるあたりで増幅効率が低下しはじめ、GC含量が70%を超えると顕著に低下した。それに対しAird等の条件では、GC含量が70%を超えても良好な増幅効率が見られた。以上の結果から、PCR条件の改善によりPCR工程に起因する高GC含量領域の喪失は回避できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解読困難領域の主原因が高GC含量である事を明らかにし、ライブラリー作成時のPCR工程を検討した。実際の改良を行うための準備は整ったが、全行程の実施には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PCR工程のバイアスは解消したが、ハイブリダイゼーション工程でのバイアスを解消する事は、原理的に簡単ではない事から、 (1)解読困難領域のPCRによる増幅(2)HaloPlexターゲットエンリッチメントシステム(アジレント)による解読困難領域の解読を検討し、パーソナル次世代シーケンサー(MiSeq)を用いて実際に解読を行う。
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