研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
23130501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
地主 将久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)
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キーワード | がん幹細胞 / ミエロイド細胞 / MFG-E8 / IL-6 / 抗がん剤 / 乳がん / M-CSF / 転写因子 |
研究概要 |
がん幹細胞制御による腫瘍内ミエロイド細胞の発がん制御に係わる責任因子の解析を行うことにより、腫瘍微小環境制御に係わるあらたな発癌活性メカニズムの解析を遂行した。この研究により、現時点で以下の2点を明らかにした。第一に、がん幹細胞より産生される特異的な液性因子を介して、腫瘍マクロファージを介した発癌活性に重要な増殖因子であるMFG-E8、IL-6の産生が誘導された。さらに、MFG-E8とIL-6はがん幹細胞のStat3とsonic-Hedgehog経路の活性を誘導することで、その自己複製能、抗癌剤抵抗性を増幅させるのに寄与していた。以上の成果は、がん幹細胞が腫瘍内ミエロイド細胞の発癌促進機能の発現に極めて重要な役割を果たしていること、さらに発癌促進ミエロイド細胞が、がん幹細胞固有の生存シグナルを活性化させることで、発癌増殖に寄与するというPositive-feedback機構の存在を明らかとした。第二に、がん幹細胞による発癌促進マクロファージ分化に必須の因子の同定、およびその産生メカニズムについて解析を遂行したところ、CD44high CD24low乳がん幹細胞でも、TaxolやAnthracyclin系抗生剤への治療耐性を獲得したsubsetでM-CSF産生が誘導されるのに対して、de novo由来のCD44high CD24low乳がん幹細胞では産生されないことを見出した。さらに網羅的遺伝子解析により、抗がん剤耐性株由来の乳がん幹細胞よりのM-CSF産生を特異的に制御する転写因子Xの同定に成功した。この転写因子Xを干渉RNAで阻害することにより、がん幹細胞のM-CSF産生抑制、およびMFG-E8やArginase-IやIL-10などM2 subsetに特徴的な因子発現を有意に抑制すること同定した。現在、この転写因子におけるM-CSF発現制御の分子機構の解明や、M-CSF/転写因子Xの治療的制御による発癌抑制効果の有無についてin vivoでの前臨床モデルを用いて検証しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的である、ミエロイド細胞発がん活性に貢献するがん幹細胞のサブセット解析や、その産生因子としてのM-CSFの重要性、さらにM-CSF産生を制御する特異的な転写因子などを既に明らかにしており、研究進捗状況は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後がん幹細胞のなかでも、抗癌剤耐性から特異的転写因子活性、M=CSF産生に至るシグナル経路の詳細な解析が重要である。さらに、ミエロイド細胞の発癌活性を規定する因子としてM-CSF以外のサイトカインや増殖因子の関与、その制御機構の解明を進めており、本年度に道程した経路とのクロストークや関連性を詳細に検証する。以上の検証により、がん幹細胞のなかでも特殊なサブセットが、ミエロイド細胞の発がん活性を惹起することで癌伸展に果たす免疫ニッチの位置付けを明らかにできるものと考えられる。
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