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2011 年度 実績報告書

癌幹細胞によるミエロイド細胞活性を介した発癌促進機構

公募研究

研究領域癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築
研究課題/領域番号 23130501
研究機関北海道大学

研究代表者

地主 将久  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)

キーワードがん幹細胞 / ミエロイド細胞 / MFG-E8 / IL-6 / 抗がん剤 / 乳がん / M-CSF / 転写因子
研究概要

がん幹細胞制御による腫瘍内ミエロイド細胞の発がん制御に係わる責任因子の解析を行うことにより、腫瘍微小環境制御に係わるあらたな発癌活性メカニズムの解析を遂行した。この研究により、現時点で以下の2点を明らかにした。第一に、がん幹細胞より産生される特異的な液性因子を介して、腫瘍マクロファージを介した発癌活性に重要な増殖因子であるMFG-E8、IL-6の産生が誘導された。さらに、MFG-E8とIL-6はがん幹細胞のStat3とsonic-Hedgehog経路の活性を誘導することで、その自己複製能、抗癌剤抵抗性を増幅させるのに寄与していた。以上の成果は、がん幹細胞が腫瘍内ミエロイド細胞の発癌促進機能の発現に極めて重要な役割を果たしていること、さらに発癌促進ミエロイド細胞が、がん幹細胞固有の生存シグナルを活性化させることで、発癌増殖に寄与するというPositive-feedback機構の存在を明らかとした。第二に、がん幹細胞による発癌促進マクロファージ分化に必須の因子の同定、およびその産生メカニズムについて解析を遂行したところ、CD44high CD24low乳がん幹細胞でも、TaxolやAnthracyclin系抗生剤への治療耐性を獲得したsubsetでM-CSF産生が誘導されるのに対して、de novo由来のCD44high CD24low乳がん幹細胞では産生されないことを見出した。さらに網羅的遺伝子解析により、抗がん剤耐性株由来の乳がん幹細胞よりのM-CSF産生を特異的に制御する転写因子Xの同定に成功した。この転写因子Xを干渉RNAで阻害することにより、がん幹細胞のM-CSF産生抑制、およびMFG-E8やArginase-IやIL-10などM2 subsetに特徴的な因子発現を有意に抑制すること同定した。現在、この転写因子におけるM-CSF発現制御の分子機構の解明や、M-CSF/転写因子Xの治療的制御による発癌抑制効果の有無についてin vivoでの前臨床モデルを用いて検証しているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の主目的である、ミエロイド細胞発がん活性に貢献するがん幹細胞のサブセット解析や、その産生因子としてのM-CSFの重要性、さらにM-CSF産生を制御する特異的な転写因子などを既に明らかにしており、研究進捗状況は概ね順調であると考えている。

今後の研究の推進方策

今後がん幹細胞のなかでも、抗癌剤耐性から特異的転写因子活性、M=CSF産生に至るシグナル経路の詳細な解析が重要である。さらに、ミエロイド細胞の発癌活性を規定する因子としてM-CSF以外のサイトカインや増殖因子の関与、その制御機構の解明を進めており、本年度に道程した経路とのクロストークや関連性を詳細に検証する。以上の検証により、がん幹細胞のなかでも特殊なサブセットが、ミエロイド細胞の発がん活性を惹起することで癌伸展に果たす免疫ニッチの位置付けを明らかにできるものと考えられる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ATM-mediated DNA damage signals mediate immune evasion through integrin-αvβ3-mediated mechanisms2012

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M, Chiba S, Baghdadi M, et al
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 72 ページ: 56-65

    • DOI

      doi:10.1158/0008-5472.CAN-11-2028

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The role of innate immune signals in the regulation of antitumor immunity2012

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 雑誌名

      Onco Immunology

      巻: 1(2) ページ: 1-6

  • [雑誌論文] Chronic activation of DNA damage signals causes tumor immune evasion in the chemoresistant niche2012

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 雑誌名

      Onco Immunology

      巻: 1(3) ページ: 1-3

  • [雑誌論文] Tumor-associated macrophages regulate tumorigenicity and anticancer drug responses of cancer stem/initiatins cells2011

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M, Chiba S, Yoshiyama H, et al
    • 雑誌名

      Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America

      巻: 108 ページ: 112425-12430

    • DOI

      doi:10.1073/pnas.1106645108

    • 査読あり
  • [学会発表] Tumor-associated dendritic cells suppress nucleic acids-mediated innate immune recognition by TIM-3-dependent mechanisms2011

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 学会等名
      第40回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉市)
    • 年月日
      2011-11-27
  • [学会発表] Dendritic cell-derived TIM-3 is a universal repressor of nucleic acid-mediated antitumor innate immune responses2011

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Laboratory Meetings "Harnessing Immunity to Prevent and Treat Disease"
    • 発表場所
      Cold Spring Harbor Laboratory, NY, (USA)
    • 年月日
      2011-11-18
  • [学会発表] ATM mediated DNA damage signals suppress antitumor immunity by integrin-αvβ3-dependent mechanisms2011

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術集会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市)
    • 年月日
      2011-10-04
  • [学会発表] Tumor-associated macrophages regulate tumorigenicity and anticancer drug responses in MFG-E8-dependent manner2011

    • 著者名/発表者名
      Jinushi M
    • 学会等名
      第9回日本臨床腫瘍学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      2011-07-21
  • [備考] 研究室URL

    • URL

      http://www.igm.hokudai.ac.jp/vec/

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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