研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
23130503
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80312320)
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キーワード | 白血病幹細胞 / ニッチ |
研究概要 |
われわれは2種類のEvilレポーターCMLマウスの作製に成功した。Evil-GFPノックイン骨髄細胞へレトロウイルスでBCR/ABLを導入し、放射線照射マウスへ骨髄移植した慢性期CMLモデル(CML(1))と、BCR/ABLトランスジェニックマウスとの交配によるもの(CML(2))である。CML(1)・(2)とも正常造血と同様にEvil陽性細胞はマウス造血幹細胞分画であるLineage marker陰性Sca-1陽性c-kit陽性(LSK)分画にほぼ限局しており、Evil陽性LSKは陰性LSKよりもin vitroコロニー形成能が高かった。In vitroでの高い増殖能と対照的にin vivoではEvil陽性CMLLSKは陰性対照よりも静止期にあり、早期アポトーシスの割合が低く、さらにin vivoにおけるBCR/ABL阻害剤抵抗性を示した。マイクロアレイ解析によりTGF-beta経路やABCトランスポーターの発現上昇がEvil陽性CMLLSKで認められた。またわれわれは同様の骨髄移植の系を用いてBCR/ABLとNUP98/HOXA9遺伝子を共発現したEvilレポーター骨髄性急性転化CML(CML in blast crisis;CML-BC)モデルをも作製し、正常Evil-GFPノックインマウスやCML(1)・(2)と比較して、より分化した血球にもEvilが高発現しており、Evilの発現上昇がみられる初めてのモデルであることを確認した。連続的骨髄移植からEvil陽性CML-BC細胞に高い白血病原性を認めた。またEvil陽性CML-BC細胞はin vivoにおいてBCR/ABL阻害剤抵抗性であった。これらより慢性期CML及びCML-BCいずれにおいてもEvil陽性細胞の白血病原性の高さそして慢性期CMLにおける治療抵抗性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス白血病モデルを駆使して白血病幹細胞とニッチの関係についてデータをそろえ始めているため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、白血病モデルマウスを用いた白血病幹細胞の生成機構と動態解析、白血病幹細胞の維持におけるニッチの役割についての検討を行う。Evil-GFPノックインマウスを用いた白血病マウスでのGFPの発現をマーカーにEvilの挙動をin vivoでトレースする。 並行して白血病幹細胞ニッチの側からも追究を行う。(1)ニッチ構成細胞の特異的な除去による白血病の動態解析、(2)ニッチ特異的遺伝子欠失による白血病動態の解析、(3)異常骨髄ニッチモデルによる白血病発症機構の解析、(4)白血病と造血細胞によるニッチの競合、(5)白血病細胞によるニッチ形成の検討についての解析を通じて、白血病幹細胞ニッチ構成細胞を同定し、その白血病幹細胞の維持機構についての検討を行う。
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