研究実績の概要 |
われわれは以前、p53ノックアウト造血細胞にJAK2V617F変異を導入して移植すると白血病を発症することを見い出している。この白血病モデルにおいて、分化マーカー陰性cKit陽性Sca-1陽性の最も幼若な白血病細胞、および赤芽球系分化マーカーCD71陽性の白血病細胞が二次移植によって白血病を再構築できることを見出した。本モデルは骨髄増殖性腫瘍から白血病への進展の機構などを追究する上で有用なツールと考えられる。 われわれは、MLL融合遺伝子白血病モデルを用いて、白血病細胞のなかでも幹細胞に富む分画において、NF-kBシグナルが活性化されていること、このような機構が他の白血病モデルやヒト症例検体でも働いていることを示した。この機構の重要性を、in vivo白血病モデルにおいてボルテゾミブなどを用いたNF-kBシグナルの阻害がAML治療効果を認めることによって証明した。さらに、このシグナルの活性化には、自身が産生するTNFalphaによるポジティブフィードバックが重要であることを明らかにした(投稿中)。 骨髄微小環境との相互作用は造血細胞の機能を規定する重要な因子である。われわれは、骨髄に存在する脂肪細胞の重要な液性因子であるアディポネクチン(Adipo)に注目し、そのノックアウトマウスを用いて造血系への作用を解析した。その結果、Adipoを欠く造血環境では、G-CSFや感染に対する顆粒球増殖応答が減弱すること、Adipo投与によりこの応答性が回復することを明らかにした。 また、われわれは、Evi1高発現白血病では高頻度にC/EBPbetaが高発現していること、C/EBPbetaアイソフォームの一つだけがEvi1との協調により白血病発症を促進させることを報告した(Watanabe-Okochi N, et al. Blood in press)。
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