研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
23130508
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 泰広 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点教授 (70313872)
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キーワード | 大腸がん / がん幹細胞 / β-catenin / マウス |
研究概要 |
治療抵抗性が示唆されている癌幹細胞の性質解明により、有効な癌治療方法の開発が期待されている。血液系腫瘍においては、癌幹細胞に関する知見が蓄積されているものの、固形癌では、未だその実態は大部分が不明である。本研究は、固形癌での個体レベルにおける癌幹細胞の性質解明を目指し、癌幹細胞を標的とした癌治療法の可能性を示すことを目標としている。 本年度は、安定型β-catenin inducibleマウスを作製し、成体マウスにβ-cateninを強制発現させた。β-catenin強制発現後早期にde novo crypt formationが誘導されることが分かった。β-catenin強制発現によりcryptを維持する幹細胞が増生することが示唆された。実際にβ-catenin inducibleマウスを大腸上皮幹細胞マーカーであるLgr5レポーターマウスと交配することで、Lgr5陽性細胞数が増加することが確認された。一方で成体マウス腸管にdominant negative TCF4を強制発現させると、腸管crypt数が減少することが分かった。腸管幹細胞の維持にはcanonical Wnt pathwayの活性化が必須であることが確認された。興味深いことに、β-cateninを強制発現させた腸管上皮には、β-catenin蛋白蓄積のheterogeneityが観察された。核にβ-cateninが蓄積した腸管上皮細胞は、細胞増殖活性が低く、正常腸管幹細胞の性質に類似することが分かった。ヒト大腸癌においても癌細胞間でのβ-catenin蛋白蓄積のheterogeneityが観察されることが知られており、この安定型β-catenin inducibleマウスは人工癌幹細胞モデルとなりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定型β-catenin inducibleマウスの解析が順調に進んでいる、Canonical Wnt pathwayの腸管幹細胞の維持、増生に関わる役割が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
このまま、安定型β-catenin inducibleマウスの解析を持続する。核にβ-cateninが蓄積した腸管細胞のslow cycling状態の維持に関わるメカニズム解明を目指す。
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