DNA損傷を引き起こす薬剤やストレスは、核小体のpolymerase Iによるribosome RNA(rRNA)の転写を抑制し、核小体崩壊を誘導する。申請者らは、核小体タンパク質であるMybbplaが核小体崩壊によって核質へと移行することを見出した。核質へ移行したMybbplaは、p53とピストンのアセチル化を促進することによってp53依存的な転写を活性化する。これらの結果は、DNA損傷などのストレス応答に核小体が極めて重要な役割を担っていることを示している。DNA損傷は核小体崩壊を引き起こすことから、核小体内に損傷修復の初期過程に関与する因子群が存在する可能性が高い。そこで、本研究では核小体に局在し、DNA損傷時に核質へと移行してクロマチン構造の変換を含むDNA修復の初期過程に関与する因子を網羅的に探索し、それらの因子群の機能解析とネットワーク解明を行う。具体的には以下の2項目について期間内に成果を出すことを目標とする。 1)DNA損傷に関与する核小体因子のsiRNAライブラリーによる探索と解析 核小体はプロテオーム解析から400-700種類のタンパク質によって構成されていることが明らかになっている。申請者らは、核小体タンパク質に対するsiRNAライブラリーを構築した。本研究では、このライブラリーを用いてDNA修復初期過程に関与するタンパク質の探索・単離および解析を行う。 2)DNA損傷修復に関与するタンパク質の損傷による局在変化の検討とその機構解析 DNA修復に関与するタンパク質の細胞内局在を明らかにし、核小体に局在するタンパク質についてDNA障害時の局在変化と制御メカニズム解析を進め、核小体のDNA障害応答における役割について解析を行う。
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