研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
23131502
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増本 博司 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80423151)
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キーワード | ヒストン修飾 / ゲノム動態 / クロマチン複製 |
研究概要 |
研究成果: 真核生物の染色体クロマチンはエピジェネティクスの担い手であり,DNA鎖の複製の際には染色体部位特異的なクロマチン構造も同時に複製される。二対の姉妹染色分体を形成するために、クロマチンの基本単位構造であるヌクレオソームを新規に補充する必要がある。新しいヌクレオソームにはクロマチン構造決定に重要なヒストン修飾がないため、クロマチン複製の際には古いヌクレオソームから新しいヌクレオソームへヒストン修飾パターンがコピーされると考えられていた。 本研究では、新規ヌクレオソームへのヒストン修飾の導入のメカニズムを解明した。その結果、古いヌクレオソーム中のヒストン修飾の種類および有無に関わらず、新しいヌクレオソームへの導入されるヒストン修飾は導入された染色体領域の種類に依存することを明らかにした。 研究の意義: 正確な遺伝情報の複製を保証するDNA鎖の半保存的複製と違い、クロマチン構造を決定するヒストン修飾パターンの複製が、ヒストン修飾酵素のクロマチンへの結合の有無に依存することを意味している。これはヒストン修飾酵素の細胞内の増減によってヒストン修飾パターン、つまりはクロマチン構造が可逆的に変化し得ることがわかる。 研究の重要性: ヒトにおいて老化に伴う腫瘍形成は、ヒストン修飾酵素の発現量が変化することによるエピジェネティクス的遺伝子発現制御の消失が原因の一つとされている。本研究にて明らかになったクロマチンにおけるヒストン修飾パターンの複製のメカニズムは他の真核生物種においても保存されており、将来的にはヒトなどの腫瘍形成のメカニズムを解明する足がかりとなると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請ではDNA損傷修復・複製に伴うクロマチンの再生機構に関する研究を行なうことを主眼にしており、本研究のクロマチン構造の形成に必要なヒストン修飾の複製のメカニズムの解明は研究の主目的と合致している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、DNA損傷修復とクロマチン構造の関係について研究を行なう。これに関連してエネルギー代謝がクロマチン構造異常に伴うDNA損傷修復欠損をある程度抑制することが明らかになっている(増本ら、未発表データ)。本研究では今後、エネルギー代謝によるクロマチン構造制御を介したDNA損傷修復機構の解明を行なう予定である。
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