研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
23131507
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 達郎 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50452420)
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キーワード | DNA複製 / ミスマッチ修復 / クロマチン形成 / ツメガエル卵抽出液 / DNA修復 |
研究概要 |
ミスマッチ修復はDNA合成エラーを修復する機構であり、遺伝情報維持・突然変異抑制・発癌抑制に重要な役割を果たす。ミスマッチ修復が機能するDNA合成直後には、DNA複製に伴って解離したクロマチンの再形成が起こる。従って、DNA複製、ミスマッチ修復とクロマチン形成の間に密接なクロストークが予想されるが、クロマチン複製の場でミスマッチ修復がどのように機能するかはほとんど分かっていない。本研究では、ツメガエル卵抽出液を用いて試験管内でDNA合成、ミスマッチ修復とクロマチン形成を同時に再現する実験系を確立し、これらの反応がどのように協調して機能するかを解析した。 過去の研究から、真核生物ではnickもしくはgapを持つDNA鎖上のミスマッチ塩基が特異的に修復されることが分かっている。我々はこれまでに、ツメガエル卵核質抽出液(NPE)がgapに依存した鎖特異的ミスマッチ修復を効率よく引き起こす事、この系では生理的なクロマチン形成が効率よく起こること、およびクロマチン形成はミスマッチ塩基周辺で特異的に抑制されることを示していた。本研究では、NPE中ではgapに依存してDNA複製因子PCNAがDNAにロードされ、PCNAはgap修復に必須であることを見いだした。PCNAは同時にミスマッチ修復にも必須であった。さらにPCNAのDNA結合はミスマッチ修復反応の鎖特異性の決定に十分であり、PCNAのDNA結合量はミスマッチ修復の効率と対応していた。これらの結果は、DNA複製に用いられたPCNAがミスマッチ修復の鎖特異性を決定することにより、DNA複製とミスマッチ修復が機能的に協調することを強く示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA複製と協調して新生DNA鎖を識別する機構の研究は当初計画以上に進展し、既に論文投稿準備に入っている。この反応が起こる過程でクロマチン形成がどのように制御されているかを明らかにすることが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
ミスマッチ修復機構がDNA複製と協調して新生DNA鎖を識別する反応の研究は順調に進展しており、今後は変異蛋白質なども用いた解析により、より詳細な機能解析を行っていく予定である。クロマチン複製とミスマッチ修復の機能的な相互作用については、クロマチン形成反応がミスマッチ修復反応に阻害的であるかどうかを実験的に解明することが必要である。さらに、PCNAを介したクロマチン形成反応が、ミスマッチ修復反応とどのように協調するのかを解析していく。
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