公募研究
真核細胞は遺伝情報を安定に保ち、正確に発現し、細胞分化を維持するため、多彩な機構を働かせている。その中の1つがクロマチンと呼ばれるDNA高次構造である。クロマチン構造の最小単位はヌクレオソーム構造で、ヌクレオソームはゲノムにおける様々な生物学的現象に伴い、ダイナミックに変化する。この研究の目的は、ゲノム普遍的制御として機能制御機構におけるヒストンの翻訳後修飾とクロマチン構造の役割を解明し、それらが引き起こす生命現象を明らかにすることである。肝臓切除後には肝臓再生と関連した劇的な遺伝子発現の変化があり、この変化とH2Aのユビキチン化の変化を調べると、H2Aのユビキチン化は遺伝子転写抑制に関与していることが明らかとなった。平成23年度はヒストンH2A脱ユビキチン化とヒストンH3K4メチル化のクロストーク及びとクロマチンリモデリングの機構を明らかにする目的でUSP21のノックアウトマウスを作製し、多方面からヒストン翻訳後修飾の生物学的意義について調べた。USP21は肝臓切除後の肝再生に重要であることを報告したがノックアウトマウスを解析するとヒストンのユビキチン化は軽度上昇するも肉眼的なレベルでの肝再生の障害は認めなかった。またマウスの個体発生に与える影響も肉眼レベルでは異常を認めなかった。平成24年度は引き続き遺伝子発現レベル、組織レベルでUSP21のノックアウトマウに障害がないか否か検索する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画していたUSP21のノックアウトマウスの解析を行うことができた。しかし結果は予想していたものと異なっていたため平成24年度はさらに解析を進めていきたい。
ヒストンH2Aのユビキチン化は遺伝子転写抑制に関与していることをin vivo,in vitroの両面から明らかにし、H3K4メチル化による遺伝子転写機構とのクロストーク機構、肝再生や癌化との関連を明らかにしていきたい。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Cytokine
巻: 56 ページ: 564-572
S1043-4666(11)00677-6[pii]10.1016/j.cyto.2011.08.014
Mol Cell
巻: 41 ページ: 554-566
S1097-2765(11)00131-6[pii]10.1016/j.molcel.2011.02.018