研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
23131516
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
白井 温子 独立行政法人理化学研究所, クロマチン動態研究チーム, 基礎科学特別研究員 (60525575)
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キーワード | ユビキチン化 / ヘテロクロマチン / DNA損傷 / Cul4 |
研究概要 |
生命は常にDNA損傷の脅威に曝されており、損傷はゲノムのどの領域でも起きると推測されている。ヘテロクロマチンは高度に凝縮した構造であり、この領域の内部に損傷が起こると、その修復に関わる修復因子や細胞周期チェックポイント因子が容易にアクセスできず、非常に効率が悪いことが予想される。しかしながら、生物がいかにこの問題を解決しているかは未だに明らかになっていない。分裂酵母のヘテロクロマチン関連タンパク質であるRik1は、Cul4ユビキチンリガーゼと複合体を形成し、UV損傷修復に関わるDDB1と構造的によく似たタンパク質であることから、ヘテロクロマチン構造の形成ばかりでなく、その領域の損傷修復にも重要な役割を果たしていることが推測される。本研究では、Cul4ユビキチンリガーゼ複合体によってユビキチン化修飾されるタンパク質を同定することによって、高次クロマチン領域におけるDNA損傷修復の分子機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、自身が以前に構築したGST-Ub法を応用し、ユビキチン化修飾を受けるヘテロクロマチン因子のスクリーニングを行った。その結果、ヘテロクロマチンタンパク質HP1/Swi6がユビキチン様の修飾を受けることを見出した。さらに、Swi6のユビキチン様修飾は、Rik1やClr4をコードする遺伝子の破壊株において消失した。これらの結果から、Cul4ユビキチンリガーゼ複合体がSwi6のユビキチン様修飾を直接的もしくは間接的に行っていることが示唆される。HP1はDNA損傷に応じてリン酸化されることやDNA損傷部位にリクルートされることが報告されているが、その機構に関しては現在に至るまで不明なままである。Swi6の翻訳後修飾がCul4ユビキチンリガーゼ複合体によって制御される機構を明らかにすることで、ヘテロクロマチン上のDNA損傷修復機構を明らかにできると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cul4ユビキチンリガーゼ複合体によって修飾されるユビキチン化タンパク質を同定するための株の構築に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
Clr4やRik1によって制御されるSwi6のユビキチン様修飾の修飾部位をMS/MSによって同定する。修飾部位を同定した後、変異株を構築し、変異株を用いたクロマチン免疫沈降法(ChIP)を行い、Cul4複合体が修復因子やチェックポイント因子をDNA損傷部位にリクルートしてくるか検討する。その後、rik1変異株やswi6の変異株で、DNA損傷修復の初期シグナルのH2AX(分裂酵母H2A)、ATM(分裂酵母Tel1)そしてATR(分裂酵母Rad3)のリン酸化が変動するか検討することで、Cul4複合体がDNA損傷修復の初期シグナルに関与しているか明らかにする。最後に各変異株を用いて、DNA損傷時にヘテロクロマチン上のヒストンが変動しているか検討する。
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