研究領域 | 性差構築の分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
23132502
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆史 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (70344934)
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キーワード | 性ホルモン / 慢性炎症 / 小胞体ストレス |
研究概要 |
近年、生活習慣病と呼ばれる疾患の大半は組織の慢性炎症がその基盤となることが知られている。 この慢性炎症疾患の多くはその発症は年齢に依存するだけでなく、性特有の発症頻度や病態を呈することが知られている。しかし、現在までに慢性炎症病態の発症やその制御に向けた研究は、その性差のメカニズムまでは解析が進んでいないのが現状である。そこで本研究者は、性ホルモンの作用が慢性炎症に何らかの役割を持つ可能性を考え、性ホルモン受容体を介した内分泌制御のメカニズムを解析することを目的としている。研究代表者自身が作製したアンドロゲン受容体(ARKO)マウスの解析において、レプチン抵抗性による遅発性肥満の発症が明らかになっており、手始めとしてこのマウスにおける代謝シグナル伝達異常のメカニズムを解析した。研究代表者らは代謝異常と慢性炎症の双方を引き起こす小胞体ストレスに着目し、性ホルモン欠乏と代謝疾患発症の接点として小胞体ストレス制御破綻が関与する可能性を考えた。In vivoにおける解析の結果、雄のARKOマウスに小胞体ストレス軽減薬(ケミカルシャペロン)を投与すると遅発性肥満とレプチン抵抗性が改善することがわかった。この結果から視床下部組織におけるアンドロゲンと小胞体ストレス応答(UPR)システムのシグナルクロストークを検討し、アンドロゲンシグナルがUPRシステムを制御する複数の転写制御因子と分子間相互作用し小胞体ストレス修復に働く小胞体シャペロン分子の遺伝子プロモーターの転写を増強することを明らかにした。 また、脂肪組織の慢性炎症モデルである高脂肪付加マウスではインスリン抵抗性における増悪効果が観られ、マクロファージと脂肪細胞の共培養系ではアンドロゲンが炎症性サイトカインの産生を抑制した。この結果を基に、性ホルモンによる慢性炎症の制御機構について、病態モデルを用いてさらに解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
性ホルモンが慢性炎症を制御することを複数の実験系で明らかにし、その詳細な解析の準備が進行している。さらに、慢性炎症と代謝異常の接点となる小胞体ストレス制御が、核内受容体を介した性ホルモンの作用とが互いにクロストークすることを見いだし、その分子的な基盤がほぼ明確にできている。また、小胞体ストレス制御と性ホルモンのクロストーク破綻と各組織特異的な慢性炎症病態との関連が解析できつつある
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今後の研究の推進方策 |
慢性炎症モデルとして、非アルコール性脂肪肝(NASH)の発症モデルと動脈硬化発症モデルマウスを性ホルモン受容体欠損マウスと交雑させている。そこで、性ホルモン作用の破綻によりこれら病態の増悪の有無と性ホルモンの標的となる新たな遺伝子発現プロファイルを同定する。これらの情報を元に慢性炎症制御における性ホルモンの作用点と分子機序についてさらに解明を進めていく。
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