研究実績の概要 |
申請者らは、マウス胎齢13.0日(E13.0)のXX卵巣を父性環境下で発生させた場合、移植後10日目以降から、鳥類、魚類に類似した順で精巣化因子の発現が開始し、自然発症的なXX精巣化が進行することを見出した(父性環境下= AMH/精巣形成 = DMRT1 = SOX9)。昨年度の課題により、父性環境下でのXX精巣化における既存の卵巣化遺伝子群(FOXL2, DAX1等)の発現変化をリアルタイムRT-PCR法により解析した結果(移植前のE13.0卵巣、移植後4,7,10日後),FOXL2以外の幾つかの卵巣化遺伝子の発現が未分化期のレベルまで有意に低下している事が明らかとなった。そこで本年度は、この父性環境下によるXX精巣化での網羅的なトランスクリプトーム解析を行い、XY精巣化のカスケードとの共通で、かつ支持細胞系譜で性特異的に発現変化する遺伝子群を同定した。その結果、父性環境下によるXX精巣化誘導において、E12.5 XY,XX支持細胞での各々約1/3の精巣,卵巣特異的遺伝子が、移植後14-18日目までに雌雄逆転することが判明した。その概要は、移植初期ではSRY依存的なSOX9誘導能(性的未分化性)の再獲得に伴い、DAX1などの転写因子を含む398個の卵巣化(E12.5 XX顆粒膜細胞特異的な)遺伝子の発現が減少し、引き続き、SOX9発現が誘導される移植18日までにE12.5XYセルトリ細胞と共通した619個の精巣遺伝子が発現上昇することが明らかとなった。以上の成果は,父性環境下での自然発症的なXX精巣化の分子基盤の役者を全て捉えることが可能となり、今度、これらの個々の性分化関連遺伝子の発現プロファイル解析を行うことにより、自然発症的なXX精巣化の分子基盤の全貌解明に繋がる。
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