本研究の目的は、B27が通常のHLAクラスIには見られない重鎖ホモダイマーとして細胞表面上に発現することに着目し、受容体との認識機構を解明し、創薬および治療へとつながる分子レベルでの解析を目指すことである。 申請者は昨年度に引き続き、B27ホモダイマーおよびLILR受容体との相互作用について蛋白質レベルでの解析を行った。まず、オクスフォード大学の共同研究者とともに、通常のHLA-B27には結合しない、B27ホモダイマー特異的な抗体の作製を行った。今後、この抗体をB27ホモダイマーの精製や蛋白質構造の安定化等に用いていきたいと考えている。 また、B27ホモダイマー単独および受容体LILRB2との複合体の立体構造解析を複数の手法で行った。X線結晶構造解析においては、B27ホモダイマーはペプチドを提示していないことが分かったため、ペプチドを加えずに調製したダイマー蛋白質を用いて多数の結晶化スクリーニングを試行したが、良質な結晶は得られなかった。B27ホモダイマーはβ2mを伴わないため、分子構造がゆるく、結晶化が困難である可能性が考えられたため、受容体LILRB2との複合体の結晶化を試みた。両タンパク質の混合条件を検討し、pH9でモル比1:1で混合すると凝集体を形成しにくいことが分かり、結晶化スクリーニングを試した。その結果、複数の微結晶を得たが、LILRB2単独の結晶もしくは良質でない結晶だった。今後引き続き条件検討を行う予定である。同時に電子顕微鏡解析を進めており、HLA-B27ホモダイマーが予想していたよりは均一の粒子状の蛋白質であることが分かった。今後画像解析を進め、分子全体のドメイン配向を明らかにしたいと考えている。また、NMR解析によってもLILRB2上のB27ホモダイマー相互作用部位を明らかにするために、LlRB2単独のNMRスペクトルの解析も継続する予定である。
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