研究領域 | 先端技術を駆使したHLA多型・進化・疾病に関する統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
23133503
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野中 勝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40115259)
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キーワード | MHC / PSMB8 / プロテアソーム / クラスI抗原提示 / 平衡淘汰 / 多型性 / 有袋類 / 単孔類 |
研究概要 |
有胎盤類のMHCは、クラスI遺伝子と免疫プロテアソームサブユニットPSMB8遺伝子が緊密に連鎖しない点で派生的な遺伝子配置を示し、他の多くの脊椎動物で認められるPSMB8遺伝子の二型性が失われている点でも特異である。これらの特化が哺乳類の進化上、何時生じたかを明らかにする目的で、両遺伝子の緊密な連鎖を保持している単孔類のカモノハシ、有袋類のオポッサム、及び両遺伝子の緊密な連鎖を失っている有袋類のワラビーについて、PSMBS遺伝子の二型性の有無を検討した。オーストラリア、北米の研究者から分与された遺伝的な多様性を期待できるDNAサンプルを、カモノハシ、ワラビーは各20個体、オポッサムは23個体解析し、いずれからも31番目のアミノ酸残基がValであるA型のPSMB8遺伝子のみが検出された。ゲノムPCR後のダイレクトシークエンスでは、殆どの個体において主にイントロン内の数カ所に二重ピークが認められ、両アレル共にA型であることが強く示唆された。この結果は単孔類、有袋類にもPSMB8遺伝子の二型性は存在していないことを示し、二型性の喪失は哺乳類の共通祖先で生じたことを示唆している。従って、進化的にはPSMB8遺伝子の二型性の喪失が先行し、その後PSMBS遺伝子とクラスI遺伝子の緊密な連鎖が失われたというシナリオが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生個体を含む、多様性の期待できるDNAサンプルを入手できたことにより、ほぼ結論を得ることが出来た。当初の予想とは異なる結論であったが、MHCの進化を考える上では重要な情報を与えるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
既に入手済みのサンプルについては、これまでに解析できたどの部分についても二重ピークを示さず、従ってF型の存在を否定できないものがある。解析を他のイントロンにも拡げて、結論を得たい。また、現在シドニー動物園から他の有袋類の血液サンプルを入手すべく交渉中である。より多くの種を調べることにより、有袋類にはPSMBS遺伝子の二型性が存在しないことを確かなものにしたい。
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