研究概要 |
本研究は、ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム情報を応用することにより、抗がん剤感受性の予測システムを開発し、がん患者の個別化治療を実現しようとするものである。具体的には乳がん組織の遺伝子発現解析から得たmRNA情報を基に(1)乳がんのサブタイプ分類(intrinsicsubtype)のため、現在のクラスタリング法に代わる簡便で高精度な分類システムを構築する。また、(2)分子サブタイプの生物学的機能の特徴を2万7千遺伝子の発現情報、miRNA・ゲノム構造情報から描き出し、分子病態の違いを細胞機能システムとして理解する。本年度は、サブタイプ間で遺伝子発現に差のある遺伝子群を検出し、それらがどのような機能パスウェイに関与しているか解析したところ、TGF-beta signaling pathway,p53signaling pathway,Focal adhesion,MAPK signaling pathwayなどが同定された。一方、Vogelsteinらは、がん化に寄与する遺伝子変異(いわゆるdriver mutation)は、12種のコア-パスウェイに集約されることを報告した。先に同定したサブタイプを規定するパスウェイと、12種コア-パスウェイの重なりが少ないため、12種コア-パスウェイが、乳がんサブタイプの状態を主成分分析法で解析したところ、TGFb/SMAD Signaling,WNT Signaling,Hedgehog GLI Signaling,RAS/RAF Signalingなどが、サブタイプ間で発現が異なっていることを同定した。次年度はこの結果を基に解析を展開する。
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