研究領域 | システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発 |
研究課題/領域番号 |
23134510
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤森 茂雄 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (90542241)
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キーワード | バイオインフォマティクス / タンパク質間相互作用 / 相互作用ドメイン / 相互作用領域 / In vitro virus |
研究概要 |
様々な個性を持つがん細胞をシステムとして理解するためには、個々のがん細胞のタンパク質間相互作用(protein-protein interaction;PPI)ネットワークを大域的かつ正確に把握するためのインタラクトーム解析手法が必要になる。本研究課題では、PPIを効率的に解析できる独自の実験手法(in vitro virus法;IVV法)を有する研究者や、がん細胞のモデル実験系を有する研究者と連携し、実験によるデータとスパコンを活用した新たながんインタラクトーム解析の確立を目指して研究を行なっている。23年度は以下の三点について進展があった: (1)IVV法と次世代シーケンサの融合技術であるIVV high-throughput sequencing(IVV-HiTSeq)法の開発を行った。IVV法はmRNAディスプレイ技術の一つであり、核酸(mRNA)情報によってタンパク質を解析することが出来る技術であり、代表者らはこの特性を利用して従来困難であった次世代シーケンサによるPPI解析を実現させた。また、PPI検出実験の信頼性および効率が大幅に向上することを確認した。 (2)IVV法は、PPIに加えてタンパク質の「相互作用ドメイン」情報を一度に解析できるインタラクトーム解析技術であるため、がん細胞に起きている異常(DNA変異など)とPPIの関連を詳細に解析するのに適した情報を提供することができる技術である。代表者らは、相互作用ドメイン情報とDNA変異などの各種データを統合し解析するための基盤として、ウェブデータベースの開発を行った。 (3)薬剤耐性の異なる2種類のがん幹細胞について、抗癌剤処理後のインタラクトームおよびトランスクリプトームの経時的な変化の違いを明らかにするため、抗癌剤処理後のRNAを経時的にサンプリングした(0.5-7.5h;1h毎)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたとおり、23年度は(1)インタラクトームデータを産出するための新たな方法の開発(IVV-HiTSeq法の開発)、(2)産出されるデータを解析するための基盤確立(ウェブデータベースの開発)、(3)データ取得実験に用いるためのサンプルの準備(2種類のがん幹細胞についての抗癌剤処理後のRNAサンプルの取得)を行っており、目的を達成に向けて十分な進展があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、23年度に取得したがん幹細胞のRNAサンプルを用いてマイクロアレイ実験を行い、トランスクリプトームデータを取得する。次に、それらの情報解析の結果から得られた重要な分子群について、IVV-HiTSeq実験のベイトとしてPPI検出実験を行う。得られたPPIネットワークに遺伝子発現情報を重ねあわせ、抗癌剤応答後のインタラクトームの動的変化の細胞による違いをネットワーク特性(中心性、スモールワールド性など)の観点から解析していく。また、IVV-HiTSeq法で得られる相互作用領域情報を利用し、ネットワークに変化を生じさせるがんの変異やスプライスバリアントについても探索を行う。
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