研究概要 |
本研究は,リアリスティックな質感をもつ刺激から生起される3次元形状知覚の理解に心理物理学的・計算論的にアプローチすることを目的とする。本年度は,質感は3次元知覚を促進すること,質感因子間には強い非線形性をもつ相互作用があること,特に,陰影を主要因とし,他の因子がこれを変調する関係があること,について検討した。 リアリスティックで良く制御された質感を表現できる心理物理実験系を構築した。刺激は,最新のray-tracing技術と,必要に応じて実写画像を融合して作成する手法を確立した。実験では,質感が3次元知覚を促進するかどうかを検討した。具体的には,一般的な質感であるハイライト・透明感を取り上げ,リアリスディックなハイライト・透明感が,3次元知覚を促進するかどうかを測定した。さらに,3次元知覚における因子間の相互作用を理解するための実験を行った。具体的には,陰影を主要因とし,他の因子がこれを促進・抑制する関係があるかどうかを検討し,さらに因子間の相互作用を検討した。光沢・透明感・不透明感など,注目される多くの質感は,ハイライトの性質が強く作用する。光学特性・画像特性からハイライト因子を制御して,これの効果を測定・解析した。この結果,ハイライトは陰影からの3次元知覚を促進するように動作し、その促進は乗算的に作用することが示唆された。 計算論的には、質感からの3次元知覚にフォーカスして符号化について検討した。視覚皮質における符号化形式研究では,V1のGabor patchが自然画像を疎(sparse)表現したものであることが良く知られている。本研究では,sparsenessに加えて神経細胞が負の表現をしないことを制約とするNon-hegative Matrix Factorizationによる符号化形式に着目した。形状知覚に重要な腹側系求心経路(V1,V2,V4)における符号化・表現に適応する最適な系を探索した。
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