研究概要 |
本申請研究では質感再現で重要な輝度知覚量と奥行き知覚量の順応が機能する条件を明確化するため,評価装置の作成,及び主観評価実験による感覚量の定量化を行い,質感の再現強調やディスプレイ産業の応用に結び付くソフトウェア機能の拡大を研究目的とする.H23年度は感覚量を評価するためのディスプレイ装置の構築と,光沢知覚に関する輝度,サイズ,形状,分布と順応の影響を明確化することを推進した.まず,高コントラストな光沢質感を正確に表示再生するため,対向型プロジェクタによるHigh Dynamic Rangeディスプレイを構築して,人間の輝度に対する感受性と周囲輝度に対する順応特性を形式化している.輝度を向上させながら詳細な階調性を保つことができるため,質感強調に一定の効果があることは確認できたが,劇的な向上のためのレンダリング手法はまだ検討を要する. 一方,立体表示による質感の強調度合いについては,視差角が大きく関与していることが明らかになった.同時に行っている人間の立体認知能力の研究からも,両眼視差を使い始める視差において光沢が自然らしく見えることが明らかとなってきているため,その他の質感でも同様の効果が得られるかを研究中である. これら研究の成果は2本の論文と7回の学会発表にて常に公開しており,学会で受けた指摘事項などを今後の改善のヒントとして推進している.また,当初計画の投影装置は製作完成したので,今後,立体表示装置との組み合わせを行いながら,最終的な研究成果に結び付けていく.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は,前年度に製作したディスプレイの投影装置を立体プロジェクタに変更して,奥行き知覚による相乗効果について解明を行う.現在のところ,輝度に対する強調効果が若干弱いことが明らかになっているため,立体的な質感強調を主体とした相乗効果を検討していく.また,立体表示においては眼の疲労といった別の因子も関連してくるため,これら因子の影響が大きくならない表示方法についても平行して検討を行っていく.
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