研究概要 |
うつ病を患うと、「見るもの全てが灰色に見える」かのごとく、主観的にネガティブな質感認知を伴うことが知られている。この質感認知の障害が、セロトニン機能異常によるものであるという仮説を立て、これを検証することで、質感認知の分子・神経メカニズムの解明に貢献することを目的とする。 平成23年度は、3頭のマカクサルを対象に行動課題を実施し、空間周波数の異なるGaborパッチの白黒コントラストの検出閾値を同定した。過去の報告通り、空間周波数が小さくなるにつれて、閾値が低くなることが確認された。コントラスト検出とセロトニンとの関係について、特に、一次視覚野で発現が多いセロトニン5HT_<2A>ならびに_<1B>受容体に着目した。まず、セロトニン5HT_<2A>受容体の阻害剤であるM100,907(0.1mg/kg, i.m.)を投与した状態で行動課題を実施し、閾値を測定した。結果、検出閾値には3頭に一貫した影響は観察されなかった。同じ投与量下において、5HT_<2A>アンタゴニストリガンドである[^<18>F]Altanserinを用いPETスキャンを行い、baselineと比較して結合能が著しく減少していたことから、M100,907の投与量は適切であることが確認された。従って、セロトニン5HT_<2A>受容体はコントラスト閾値感受性に無関係であると考えられる。 今後、5HT_<1B>受容体阻害剤を投与することで、同受容体の閾値感受性に対する関与を確認する予定である。さらにサルをうつモデル(甲状腺機能低下症状態)にすることで、白黒のコントラスト感受性が低下するかを検証する予定である。
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