研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
23135533
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
関 和彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)
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キーワード | 霊長類 / 感覚神経 / 手 / 感覚ゲーティング / 大脳皮質 |
研究概要 |
本研究の目的は、手の操作的運動(マニピュレーション)とその結果引き起こされる感覚入力(触覚・深部感覚)が脳内で処理されて、物体の物理量や質感を認知する仕組みを、神経生理学的な観点から明らかにする事であった。そのために本年度は、特に筋神経へのシナプス前抑制を計測する方法の確立を目指した。つまり、求心性と遠心性が混在する橈骨神経にシリコン状のか不電極を装着し、脊髄微小電流刺激によって、逆行性電位を誘発した。その際の逆行性電位が求心神経から記録されていることが保証される方法論が存在しなかった。そこで、げっ歯類の脊髄を対象に急性実験を繰り返した結果、2発刺激に対する2発目の応答性によって、両者を切り分ける事が可能なことが明らかになった。つまり、当該電位は遠心性神経の場合、一発目に対する応答による不応期のために、2発目への応答性が著しく低下する。一方、求心神経の場合、逆に増加する。この増加はPrimary afferent depolarization、特にGABAa作動性の介在神経を刺激したことによる末梢神経末端部の脱分極が増大したためと考えられる。さらに、組織学的な検索からも前者は特に脊髄前角、後者は後角への刺激によって誘発される場合がほとんどであった。これらの結果は、混合神経においても筋求心神経へのシナプス前抑制が測定可能であることを示している。この方法を用いて、サルの脊髄刺激によって誘発される神経電位を運動中に記録し、その変化を測定することにより、随意運動の制御における筋神経へのシナプス前抑制の役割が世界で初めて明らかにされる。それは体性感覚による質感認知機構理解に役立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カフ電極の開発は順調に進んでおりそれらの手術方法などについても確立した。当初、マニピュランダムの故障でサルの行動訓練が遅延したが、修理後効率的に訓練を行うことにより当初の目的を達成した。また、筋神経へのシナプス前抑制の測定方法が確立した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように筋神経へのシナプス前抑制の測定が可能になった。今後は、それらを用いてサル手指運動時のシナプス前抑制を測定する。また、感覚神経から神経活動を直接記録する方法の確立も行う。
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