研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
23135534
|
研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
宮脇 陽一 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (80373372)
|
キーワード | 脳・神経 / 神経科学 / 機械学習 / データマイニング / 画像認識 / 視覚 / 質感 / fMRI |
研究概要 |
質感は物体の素材や状態を判断する手がかりであり、捕食行動や危険回避行動を取る上で、私たち人間を含む生物一般の生存に重要である。また質感は、物体の価値にも直結し、工業製品の印象に影響を与える重要な要素である。しかしながら、物体の質感情報がどのように脳内で表現されているのか、これまでほとんど分かっていない。質感情報の脳内表現を調べることの困難さのひとつは、質感が非常に高次元の情報であり、パラメータを陽に制御した実験刺激を作り出すことが難しいことにある。その一方で、質感印象は形容詞的な言語表現を用いてシンプルに記述できる。本研究ではこの点に着目し、第一に、一般的な物体画像をその画像内の物体と共起する形容詞の確率値の集合として定量化すること、第二に、その物体画像観察時の脳活動と形容詞共起頻度との対応関係を機械学習によって求めることにより、多様な質感に対応する脳内情報表現を一般的な画像観察時の脳活動から抽出することを目指した。 本年度の実験では、名詞概念に対応してカテゴリ分けされた画像データベースImageNetから一般的な物体画像を420カテゴリ分ランダムに選択し、それらの画像観察時の被験者の脳活動をfMRIで計測した。ImageNet上で選択した画像カテゴリ名と共起する形容詞群とその共起頻度をgoogle社が提供するウエブテキストコーパスを用いて計算し、個々の画像カテゴリに対して形容詞共起頻度ベクトルを定義した。この共起頻度ベクトルの個々の要素(形容詞それぞれに対応)を脳活動から予測する統計モデルを学習した。これまでの予備的解析では、個々の形容詞要素の有無の予測成績において、高次視覚野のほうが低次視覚野より高い成績が得られる傾向にあった。今後は、予測精度の向上を目指した手法の改良を行いつつ、個々の形容詞に対応した脳活動間の類似性、学習したモデルの差異についてさらなる検討を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初目的として、第一に、一般的な物体画像をその画像内の物体と共起する形容詞の確率値の集合として定量化すること、第二に、その物体画像観察時の脳活動と形容詞共起頻度との対応関係を機械学習によって求めることにより、多様な質感に対応する脳内情報表現をごく一般的な画像観察時の脳活動から抽出することを挙げた。この二点に関しては、本年度の実験および解析により、概ね達成できたものと思われる。今後より詳細な解析を加え、得られた結果の検証が望まれるため、「(2)おおむね順調に進展している」の評価が妥当と考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、これまで得られた結果の妥当性と再現性の検証を確実に行うことが必要である。またその結果をもとに、原著論文および学会発表などを利用し、研究成果の公表の準備を進める予定である。さらに、どのような画像特徴が特定の質感を生じるのか、という画像解析に基づいた研究展開も重要である。今後は脳活動の解析と同じく、画像解析の研究も並行して進める予定である。
|