研究概要 |
23年度は、多階層生体システムモデルの構築に必要な反応パラメーターの取得を促進する方法論の開発を行った。 ①高感度FRETバイオセンサーを用いた、生細胞内における酵素反応パラメーターの定量的測定法の開発:生きた細胞において分子の活性を可視化するために、FRETバイオセンサーが開発されてきた。本研究では、高感度の分子内FRETバイオセンサーをハイスループットに構築する方法を開発した。改善点は、(1)ドナーとアクセプター蛍光タンパク質の最適化、(2)100アミノ酸以上のリンカーを用いること、の二点であった。この手法により、これまでにPKA, ERK, PKC, Akt, S6K, RSK, EGFR, Src等のリン酸化酵素のFRETバイオセンサーを構築した。本研究成果は論文として報告し、特許を申請、受理された(Komatsu N et al., Mol Biol Cell, 2011)。これらのFRETバイオセンサーを用いて、生細胞におけるリン酸化反応の速度定数を取得している。 ②蛍光相互相関分光法FCCSを用いた生細胞内分子間相互作用の定量的測定法の開発: 分子間相互作用を定量化するために、蛍光相関分光法FCS、蛍光相互相関分光法FCCSを用いて、生細胞内で解離定数を測定する手法を開発した。FCS, FCCS測定に適した蛍光タンパク質のペアを検討したところ、GFPとHalo-TAMRAタンパク質のペアが最も適していることが分かった。さらに、解離定数測定のための条件検討を行い、EGFR-Ras-ERKシグナル伝達系を構成する分子間相互作用の解離定数を十数種類測定することに成功している。
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