本年度は、昨年度に開発した方法で反応パラメーターの取得をさらに進めるとともに、定量パラメーターを用いた細胞内シグナル伝達システムのシミュレーションモデルの構築を行うことを目指した。 ①定量パラメーターを用いたシグナル伝達システムのシミュレーションモデルの構築: Ras-ERK MAPキナーゼシグナル伝達系の中に含まれるタンパク質間相互作用を昨年度開発した相互相関蛍光分光法FCCSを用いた手法により測定した。その結果、合計20以上ものタンパク質間相互作用を生きた細胞内で測定することができた。ここで得られたパラメーターを基にRas-ERK MAPキナーゼシグナル伝達系のシミュレーションモデルをCell Designerにより構築し、数値シミュレーションを行った。その結果、アダプタータンパク質ShcがEGF受容体に複数結合することが下流にシグナルを伝えるために必要であることを見出した。また、細胞内解離定数の値は、試験管内の解離定数と大きく異なっており、細胞内の環境を加味した反応パラメーターの重要性が明らかになった。
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