公募研究
本研究課題では、心臓における生体ストレス分子TRPM2チャネルの役割の解明を目指した。TRPM2を強制発現させた細胞を用いて、TRPM2の機能の定量的測定を行った。まず、TRPM2発現HEK293細胞を用いてTRPM2の活性化剤であるADPリボース刺激および過酸化水素刺激に対する活性をパッチクランプ法で定量的な測定を行った。TRPM2の性質を調べる過程で2種類のTRPM2の活性制御に関わる相互作用タンパク質を見つけた。一つ目は、てんかん原因遺伝子EFHC1がTRPM2と相互作用をすることを見つけた。TRPM2は、TRPM2のC末およびN末を介して全体的にEFHC1と相互作用をし、脳、海馬において共局在をすることが分かった。また、カルシウムイメージングおよびパッチクランプ法を用いた機能解析では、過酸化水素およびADPリボースに対するTRPM2の感受性を増強することが酸化ストレス条件下において細胞死を増大させることが分かった(Katano et al. Cell Calcium 2012)。二つ目は、リンパ球の増殖に関与するCD38が相互作用することを見つけた。CD38の相互作用は、高浸透圧刺激でTRPM2と協働することにより活性化し、細胞増殖に関わることを報告した(Numata et al. J Physiol. 2012)。これらの相互作用タンパク質は、心臓にも発現が認められるために心臓において虚血再灌流時の酸化ストレスが大量に産生される病態時においても浸透圧変化のような生理的条件においてもTRPM2が心機能に関与している可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
I.単離心筋細胞におけるTRPM2の発現確認と定量的測定によるデータ取得・心臓の部位ごとにTRPM2の発現を定量的に解析するためにリアルタイムPCR法を用いてmRNA量を、ウェスタンブロット法を用いてタンパク量の評価を行なった。・1.と同様に心臓の部位ごとで、パッチクランプ法を用いて電流密度を求めた。この際、TRPM2チャネルの活性化には、TRPM2の活性化剤であるADPリボースを用いて検討を行なった。その結果、心房筋細胞においては、TRPM2様の直線的なIV曲線を示す電流が記録された。II.発現系におけるTRPM2の定量的測定によるデータ取得・シミュレーションで用いるためのデータとしてTRPM2チャネルそのものの性質を知るためには、動物細胞を用いた発現系で定量的測定を行うことが必要と考え、発現系でパッチクランプ法を用いて検討を行った。TRPM2チャネルの活性の評価を行なう過程で、2種類のTRPM2の活性制御に関わる相互作用タンパク質を見つけた。一つ目は、てんかん原因遺伝子EFHC1がTRPM2と相互作用をすることを見つけた。EFHC1がTRPM2んい相互作用をすることで、酸化ストレスに対するTRPM2の感受性を増強し、細胞死を増大させることが分かった(Katano et al. Cell Calcium 2012)。二つ目は、リンパ球の増殖に関与するCD38が相互作用することを見つけた。CD38の相互作用は、高浸透圧刺激でTRPM2と協働することにより活性化し、細胞増殖に関わることを報告した(Numata et al. J Physiol. 2012)。これらの相互作用タンパク質は、心臓にも発現が認められるために心臓において虚血再灌流時の酸化ストレスが大量に産生される病態時においても浸透圧変化のような生理的条件においてもTRPM2が心機能に関与している可能性を示した。
今後、ランゲルドルフシステムを用いて、心臓における虚血、再灌流実験を行ない、この際の変化を野生型マウスおよびTRPM2欠損マウスを用いて比較し、TRPM2の役割を見出す。また、単離心筋細胞でTRPM2の正常時、虚血、再灌流時における役割についてもパッチクランプ法を用いて、検討を行なう。
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