研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
23136510
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 祐一郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20532980)
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キーワード | イオンチャネル / レドックス / プロトンチャネル / 血球細胞 |
研究概要 |
活性酸素産生制御に関わる電位依存性H+チャネル(VSOP)をターゲットに多階層に渡る定量的解析を行った。 (1) 構造レベル1:VSOP細胞内コイルドコイルの温度と酸化還元による安定性を蛋白質化学的に定量化した。VSOP細胞内コイルドコイルが酸化/還元に応答して会合/解離することを見いだした。さらに酸化還元に応答したコイルドコイルの構造を明らかにするため、H2O2またはDTT存在化で細胞内領域を結晶化し、高分解能でのX線結晶構造解析を行った。 (2) 構造レベル2:VSOPの細胞内コイルドコイルの酸化還元による制御をもとにシュミレーションを行っていくには、正確な定量化が必要となってくる。そこで、発現精製したコイルドコイル領域の蛋白質の酸化による結合定数を、H2O2存在下でのCDスペクトラムの熱安定性を指標に計算した。 (3) 構造機能レベル:VSOPの酸化還元、温度、pH変化、膜電位による修飾機構を解析する。VSOPチャネルを細胞に発現させ、H2O2/DTT投与による酸化還元、温度の上昇下降、pH変化、膜電位変化による機能的修飾をホールセルパッチクランプ法により電気生理学的に定量的に解析し、細胞内コイルドコイルが酸化還元、温度のセンサとして働いていることを見いだした。 (4) 分子レベル:NADPHオキシダーゼとVSOPの相互作用の分子基盤を明らかにするため、発現系細胞にNADPHオキシダーゼ各サブユニットとVSOPのcDNAを強制発現させ、免疫沈降を行い、VSOPとNADPHオキシダーゼとの膜上での結合を見いだした。 (5) 細胞レベル:正常マウス、VSOPノックアウトマウスのそれぞれから好中球を単離し、O2-、H2O2、HOCl(好中球のみ)などの活性酸素のレベルを定量化する実験系の確立を行った(連携研究者の大河内助教と連携)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年間の研究計画期間において、本年度は構造・分子レベルの階層での研究を中心に行い、当初の予定通りの結果を得ることが出来た。具体的には、VSOPチャネルの細胞内領域の結晶構造解析に成功し、酸化還元にセンサーとして機能すること、温度感知センサーとして機能していることを見いだした(投稿論文リバイス中)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では活性酸素産生制御に関わる電位依存性H+チャネル(VSOP)をターゲットに多階層に渡る定量的解析を行うことを目標に掲げている。そのため、今後(次年度)では、より高次の階層(細胞、組織、臓器レベル)にて解析を行う。そのための、ノックアウトマウス作成、繁殖にすでに成功してあり、これを用いて解析を行う。具体的には、単離した血球細胞の活性酸素産生能とVSOP、NADPHオキシデースの相互作用を解析する。個体レベルでの侵襲に対する免疫応答を解析する。多階層での研究結果を統合できるかという問題点が生じてくることが予測されるが、コンピュータシミュレーションを使用し、結果の統合、活性酸素産生制御機構の包括的理解を目指す。
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