活性酸素産生制御に関わる電位依存性H+チャネル(VSOP)をターゲットに多階層に渡る定量的解析を行った。 (1) 構造レベル:VSOPは2量体として機能する。VSOPの膜貫通領域にCys残基を導入し、酸化剤による架橋を生化学的に解析した。これにより、VSOPの2つのサブユニットが膜貫通領域で近接する部位を明らかにした。これにより、VSOPチャネルは2量体間で機能的連携を行なうことが可能となる。 (2) 構造機能レベル:VSOP細胞内コイルドコイルが酸化/還元に応答して会合/解離することを見いだし、酸化還元に応答するコイルドコイルの構造を、H2O2またはDTT存在化で、結晶構造解析を行った。得られた結晶構造を基に、酸化還元に応答するイオンチャネルの電気生理学的な解析を行なった。 (3) 分子レベル:VSOPの2量体化を担うコイルドコイルドメインと、膜貫通領域との分子内機能連携を解析するため、2つの部分をつなぐリンカーの変異体を網羅的に作成し、電気生理学的性質を解析した。リンカー部分のアミノ酸残基の数とVSOPチャネルの活性化キネティクスのスピードの相関はヘリックスの周期性を呈し、この二つの領域はヘリックスでリンクしていることを明らかにした。 (4) 細胞レベル: 正常マウス、VSOPノックアウトマウスのそれぞれから好中球を単離し、O2-、H2O2、HOCl(好中球のみ)などの活性酸素のレベルを定量化する実験を行った。ノックアウトマウスでは活性酸素産生レベルが減弱し、さらに産生しすぎないようにするフィードバック機構の破綻も明らかにした。 (5)個体レベル:ノックアウトマウスに対して感染実験を行ない、カンジダ真菌に対する抵抗力の減弱を明らかにした(連携研究者の大河内助教と連携)。
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