これまでの研究成果から得られた、KCNQ1とKCNE1の複合体チャネルのストイキオメトリーの多様性について、その機能的な意義を明らかにする目的で、主にアフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的手法により検討を行った。特にその活性化のキネティクスについて、20秒から30秒の脱分極刺激を入れることにより、主に2~3秒程度の時定数を持つ速いコンポーネントと20~30秒に及ぶ遅い時定数を持つ遅いコンポーネントに大別できることを明らかにした。そしてそのコンポーネントの割合が注入するKCNE1のmRNAの量に依存して変化し、KCNE1の量が多いほど遅いコンポーネントの割合が増大することを明らかにした。すなわち、過剰なKCNE1の発現がチャネルの活性に対して抑制的に働いていることがわかった。さらにタンデムコンストラクトを用いることで、4:1、4:2、4:4(KCNQ1:KCNE1の分子比)のストイキオメトリーを持つイオンチャネルを発現させたところ、やはり4:4のチャネルは遅いコンポーネントの割合が高く、活性化のキネティクスが4:2や4:1のチャネルに比べて遅くなっていることが明らかとなった。以上の結果を踏まえ、KCNQ1-KCNE1チャネルのKinetic Modelを構築し、シミュレーションによりModelの妥当性を検討した。4つある電位センサーのうち、KCNE1が結合した電位センサーの電位依存性を変化させることで、4:4あるいは4:2のチャネルの実験結果を再現することができた。今後の課題として、KCNE1が結合した電位センサーと結合していない電位センサーが、実際に異なる動きをしていることを実験で示すことが必要であり、それによりKCNQ1-KCNE1イオンチャネル複合体のKinetic Modelを完成されることができると考えている。
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