研究領域 | 土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究 |
研究課題/領域番号 |
23H03912
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
畑山 智史 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (00907595)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 狩猟採集民 / 放射性炭素年代測定 / 貝殻成長線 / 季節性 / 定住 |
研究実績の概要 |
本研究では、定住型狩猟採集民の理解のため、人類学と考古学における定住に関する学史の整理をおこなった。また、その成立モデルを構築するために、定住の初期段階を把握するため、これまでに実施してきた年代測定と季節分析の事例を集成および新たに高精度な年代測定と季節分析の実施および方法論の改善をおこなった。 定住に関する学史の整理にあたり、定住の定義として、ネズミの存在が一示標になる可能性があることから、その方法として従来の動物考古学的アプローチによる出土事例の蓄積と新たに土器に残るネズミの咬み痕の有効性を指摘でき、日本動物考古学会第10回大会で発表した。 これまでに実施してきた年代測定と季節分析の事例を集成および新たに高精度な年代測定と季節分析の実施の結果、古環境復元において、いわゆる8.2kaイベントと4.2kaイベントにともなう、貝殻の成長遅滞が指摘でき、定住ないし遊動の転換期におけるその背景を検討する新たな視点が見出された。この成果は、奈良県で開催された第40回日本文化財科学会においてポスター賞に採択された。 さらに、これまで測定事例が少例である縄文時代早期および前期貝塚の貝殻を試料とした年代測定をおこなった。貝殻の分析事例の集成により、夏島式期で9930 BP、花輪台式期で9770 BP、花輪台II式で9600 BP、東山式で9565 BPと整理できた。また本研究により、子母口式で8310 BP、野島式で7980 BPと7870 BP、茅山下層式で7630 BP、茅山上層式で7455 BP、関山II式で6200 BPの年代値が得られた。海洋リザーバーやローカルリザーバーを検討するうえでの基礎データの集成できた。その結果、遺跡の下位に埋蔵する化石由来のリザーバーの可能性を新たに指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定のとおり、関東地方の初期貝塚の年代値を収集できた、早期中葉や早期末葉、前期初頭の一時期においては、土器の実見等まではおこなったが、分析可能な試料が乏しく、その実態が把握できていない。季節分析について、過去のデータの集成および整理、新たなサンプリグができたが、解析および分析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
定住型狩猟採集民の成立の年代を明らかにするために、引き続き、縄文時代早期末葉から前期初頭の年代値を再整理および新たな試料で分析を行う予定である。今年度に集成および測定した試料の年代については、較正をおこない、絶対年代を算出し、特に縄文時代早期および前期の土器の広域編年等に応用する。また縄文時代早期および前期の海洋リザーバーやローカルリザーバーを算出する。今年度、新たに測定した試料を用いて季節分析をおこない、より高精度な時間軸での貝採取を中心とする遺跡の利用を明らかにすることで、定住および遊動などの生業の変化から成立モデルを試案したい。
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