研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
23H03941
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 新之介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (50755915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動的エキシトン / 分子集合体 / 複合体結晶 / 金属錯体 / 分子間相互作用 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
結晶性化合物は単結晶X線構造解析によって分子の配向を厳密に議論可能であるため,構造と物性の相関を解明するのに適した材料群である。しかしその研究例の多くは,積層構造を形成させやすい平面型の分子素子を用いたものであり,非平面性分子を用いた研究例は限られている。本研究では,CT性の励起状態を形成する非平面性遷移金属錯体と環状有機ホストを組み合わせた超分子結晶を用いて,CT性励起状態における電子の動的効果(動的エキシトン)と環状有機ホストの影響について調べた。 CT性の励起状態から発光を示す正八面体型のIr錯体を用いた超分子結晶の発光特性を調べたところ,錯体単独の結晶と比べて発光波長に顕著な短波長シフトが見られた。結晶構造解析によってIr錯体と有機ホストの位置関係を調べたところ,環状有機ホストがCT性励起状態に関与する有機配位子を覆うような配向をしていることが分かった。また,配位子が異なる発光性Ir錯体を用いた超分子結晶では,配位子の置換基サイズと性質によって有機ホストとの相対位置が変化し,それに応じて発光特性も変化することが分かった。Ir錯体と類似構造を持つ発光性Ru錯体を用いた場合でも超分子結晶が得られた。得られた結晶の光物性を測定したところ,Ir錯体の超分子結晶の結果と同様に発光波長の短波長シフトが観測されたが,量子収率は低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって,正八面体型の発光性錯体と環状有機ホストからなる超分子結晶を合成でき,予備的ながらその光物性を調べることができた。いずれの化合物においても錯体単独の状態とは異なる光物性を示すことが分かったことから,有機ホストとの複合化がCT性励起状態に有意な影響を与えることが明確化された。 これらの結果を踏まえると,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって,超分子結晶の予備的な光物性を明らかにすることができた。また,金属イオンや有機配位子が異なる金属錯体を用いた場合でも超分子結晶が得られ,錯体単独のものとは異なる光物性を示すことを明らかにすることができた。今後は,得られた成果を論文化するべく参照化合物のデータ等を集めつつ,種々の超分子結晶の結晶構造と光物性変化を系統的に調べていく。そして,環状有機ホストとの複合化がCT性の励起状態にどのような影響を与えるのかを包括的に理解することを目指していく。
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