研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
23H03997
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中井 陽一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (30260194)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 星間化学 / イオン表面反応 |
研究実績の概要 |
本研究は,複雑有機分子生成に関わる新しい反応過程として近年注目されている気相イオンと氷星間塵表面上の水分子や他の安定分子が同時に関与する相互作用を通した反応について,星間分子雲内での存在度の大きい分子イオンを気相イオンの主な対象として実験研究から気相イオンと氷星間塵表面が協働する新しい複雑有機分子生成過程を実験的に探索することを目的としている.本年度は,既有のイオン源を利用して,低エネルギーの分子イオンと冷却基板上に作製した氷星間塵を模擬した極低温固体表面との反応についての予備実験と,新イオン源であるイオンストレージ型イオン源の導入を行った. 既有のイオン源を用いた予備実験では,極低温メタノール固体とメチルカチオンとの反応実験を主に実行した.メタノール固体を作製する基板温度を変えた実験や同位体標識を利用した実験などを行い,ホルムアルデヒドやジメチルエーテル(もしくはエタノール)の生成の可能性があることがわかってきた.次年度はこれらの反応過程が起きていることを確認するために実験を継続する. 新イオン源であるイオンストレージ型イオン源の導入については,イオン源の中心部であるイオナイザーに加えてイオナイザーを格納支持し高周波電場やイオン引き出し電場を印加するための器具類を製作した.それらを現有実験装置のイオン選別系と同様の仕組みを持つイオン源試験用のテストベンチに組み込み開発試験を開始した.しかしながら,上記のように予備実験で新しい複雑有機分子生成過程の可能性が見つかり予備実験を予定より長く実行したため,このイオン源の開発試験に遅れが生じざるを得なかった.次年度はこの開発試験を行い実験装置に新イオン源を組み込む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既有のイオン源を利用して行った予備実験で気相分子イオンと氷星間塵表面が協働する新しい複雑有機分子生成過程の可能性が見つかり予備実験を予定より長く実行したため,導入したイオンストレージ型イオン源の開発試験に遅れが生じざるを得なかったため.
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今後の研究の推進方策 |
導入したイオンストレージ型イオン源の開発試験を継続する.開発試験やその後の改良を経て実験装置のイオン源として組み込み実験に用いる予定である.また,既有のイオン源や開発試験後のイオンストレージ型イオン源を用いて,低エネルギー気相イオンと氷星間塵を模擬した極低温固体表面との反応について実験を遂行し,新しい複雑有機分子生成過程を探求する.
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