公募研究
本研究では固体表面に現れるd電子系の高密度共役電子状態の開拓とd電子系に特徴的な磁性との関連を明らかにすることを目的にしている。特に研究代表者が近年発見した非磁性絶縁体FeSiの表面に現れるトポロジカル強磁性金属状態を対象として、さまざまな異種物質との接合界面を作製し、界面におけるトポロジカル磁気構造形成を目指している。本年度は、強いスピン軌道相互作用を有するPtとのヘテロ接合を作製した。Pt/FeSi界面において反対称的スピン軌道相互作用に起因して、トポロジカルスピン構造のスキルミオンの形成が観測された。これらのスキルミオンはサブミクロンスケールの大きさを有し、欠陥や表面荒さといった結晶構造の乱れによって強くピン留めされた状態であることがわかった。強いピン留め効果によって、従来のスキルミオンよりも6桁程度大きな電流密度によっても駆動・崩壊されない強固な状態となっている。これにより、高電流密度で顕著になる非線形伝導特性をスキルミオンの存在下で測定することができ、7次にまで及ぶ高次の非線形ホール効果を観測することに成功した。高次非線形ホール効果は電流による非線形磁化ダイナミクスや非共線スピン構造による電子散乱機構に起因していることがわかった。特に後者のメカニズムは、非線形トポロジカルホール効果とも言える新しい非線形伝導現象に対応する可能性がある。また、大きな非線形伝導特性はリザバーコンピューティングといった応用への展開も期待できる。上記の成果は論文1件、解説記事1件として発表できている。さらにPt/FeSi界面以外にもさまざまな物質系を開拓しており、論文2件を出版している。
1: 当初の計画以上に進展している
研究初年度に、目的としていたd電子高密度共役状態におけるトポロジカルスピン構造の形成や非線形伝導現象の発見をトポロジカル表面と重金属接合によって実現することができた。また研究成果を論文や解説記事として発表することができた。これらの成果も含め、日本物理学会若手奨励賞の受賞に繋がった。
Pt/FeSi界面におけるスキルミオン形成と高次非線形ホール効果の発見を基に、さまざまなヘテロ接合界面の作製とd電子高密度共役系におけるスピン状態の物理の構築に繋げていく。まずは、FeSiのトポロジカル強磁性表面状態に対してPt以外の接合物質を積層し、積層物質による近接効果の詳細を明らかにする。さらにホール効果以外にも非相反電気伝導(ダイオード効果、整流効果)といった非線形伝導現象を開拓していく。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
Journal of Physics: Materials
巻: 7 ページ: 025009~025009
10.1088/2515-7639/ad2ec4
Physical Review Materials
巻: 8 ページ: 044407
10.1103/PhysRevMaterials.8.044407
巻: 8 ページ: L041801
10.1103/PhysRevMaterials.8.L041801
Physical Review B
巻: 108 ページ: 054445
10.1103/PhysRevB.108.054445
https://researchmap.jp/n_kanazawa
https://sites.google.com/view/kanazawa-lab