研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
23H04018
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
帯刀 陽子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30435763)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 分子性導体 / 分子性ナノコイル / 誘導起電力 / 電磁ナノコイル / 分子集合体 |
研究実績の概要 |
電磁誘導を用いて誘導起電力を分子自らが生じる分子性電磁ナノコイルの発見は、学術的、産業的に大きな注目を集めた。しかし、分子性電磁ナノコイルの構造と電磁物性の相関が明らかになっておらず、この点が原因でエレクトロニクス、メディカルデバイスへの応用に支障をきたしている状況にある。本研究で得られるナノコイルが生じる電磁物性は新エネルギーとして重要であり、分子エレクトロニクスデバイス分野を飛躍的に発展させることが期待されているにも関わらず、未だ詳細に解析されていない。 分子性導体にかさ高いキラル分子と水素結合部位を導入することで、非対称な側鎖を付与した分子を種々合成した。様々な有機導電性分子を用いて、分子の両端に異なる分子間相互作用を有する部位を導入することでナノコイル構造を作成した。作成時の溶媒種、乾燥時間、濃度などの外的要因を変化させることで、コイルピッチ、長さ、巻き数、配向性がコントロール可能となるため、多様なサイズ・形状を有するナノコイルを作成した。 分子性電磁ナノコイルの電磁特性は、これまでの研究過程で独自に組み上げた測定装置を用いて評価した。はじめに、これまでの研究で得た分子性電磁ナノコイルについて、誘導起電力データを収集した。続いて、配向性をコントロールした分子性ナノコイルシートを作成し、起電力を測定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で得られた有機導電性分子を合成し、分子集合体ナノコイルを作成した。この材料を用いて、コイル直径、長さ、巻き数をコントロールしたナノコイル群を得た。また、分子性ナノコイルの配向性を制御することで、配向性を有するナノコイルシートを作成した。次に、バルク状態での分子性ナノコイルの電磁物性を評価し、誘導起電力を測定した。磁極からの距離、周波数を変化させることで、誘導起電力の変化を追求し、コイル構造由来の起電力を正確に評価できていることが分かった。配向性、サイズ、長さ等を変化させたコイル群の起電力については、構造変化由来の起電力値の違いが明確に測定できていないため、再測定を行う必要がある。以上のことから本研究はおおむね順調に進行させることができたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた有機導電性分子を合成し、分子集合体ナノコイルを作成し、コイル直径、長さ、巻き数をコントロールしたナノコイル群を得た。正確なサイズ、長さのコントロールが難しく、同サイズ、同形状のコイルを再現性良く作製することが困難であった。そのため、今後は形状制御の因子を明確にし、分子を集合化させる際の温度、湿度、基板等についても検討する。また、分子性ナノコイルの配向性を制御することで、高配向性を有するナノコイルシートを作成できたが、配向性の効果による電気シグナルの変化は電流で評価する必要があることから、評価方法についても検討する。上記の点を明確にした後に、様々なサイズ、形状を有するコイル群の誘導起電力を測定し、構造と物性の相関を明確にする。この時得られたデータを用いて、ターゲットとなる分子や細胞に適した起電力を生じることができるようなナノコイルデバイスを作成する。
|