研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04064
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
橋本 朋子 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10589930)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高分子バイオマテリアル / 物質共生 / 材料物性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、人工血管、人工皮膚、縫合糸等に使用されている高分子バイオマテリアルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、コラーゲン、シルクフィブロインを選択し、評価を進めている。今年度は、昨年度までに続き、各高分子の生体との共生に寄与するパラメーターを把握することを目的とし、各高分子様々な条件で作製し、得られた材料の表面および表面近傍の特性を多角的に調べた。各フィルムの表面特性評価として、水接触角やタンパク吸着量を調べ、フィルム内高分子の分子構造と水やタンパク質との接触についての知見を得た。また各フィルムに培養細胞を播種し、様々な細胞挙動を調べた。 分子構造を変化させたPET上では、各種細胞の初期接着に差異が認められた。また、特定の二次構造含有率が異なる表面を有するコラーゲン上では、マクロファージの分極パターンが異なる可能性が示唆された。さらに、表面状態が異なるシルクフィブロイン上で培養した繊維芽細胞の網羅的、または定量的遺伝子発現解析では、遊走性が高まる表面上の細胞において、複数のシグナル伝達経路が想定される特徴的な遺伝子発現パターンが認められた。これらの結果より、同じ組成を有する材料であっても、分子構造の差異を細胞がまた適応している可能性が示されていると考えられる。引き続き検証を進めることで、生体との共生に寄与する高分子バイオマテリアル側の特性について更なる知見が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにそれぞれの高分子バイオマテリアルで、分子量や組成を変えずに分子構造が異なる各サンプルを作製し、これらと生体とのin vitro相互作用を多角的に進めてきている。よって進捗は順調である判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、in vitro評価として、それぞれの高分子バイオマテリアル接する特定の組織・細胞を用いて、材料と接した後に起こる細胞の炎症応答、網羅的、および定量的遺伝子発現解析を詳細に行う。得られた結果をフィードバックし材料特性との相互作用を左右する要因を絞り込む。
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