研究実績の概要 |
細胞膜は不均一な分子分布を示し,相分離(ラフト)を呈している.このラフトは,毒素/ウィルスとの結合による疾患やシグナル伝達をはじめ,多くの生命現象に関与していると報告されている.この事から,ラフトとの親和性の違いを定量的に解析可能な手法が重要となる.そこで,ラフトとの定量的な相互作用の解析法の確立を目的とする.このため,本年度は脂質膜の物性解析法に関して研究を実施した.特に,膜の流動性(粘性)や相状態(相転移現象)は,相互作用に大きく影響する物性であるために,その解析法は重要である.また,本提案では,懸濁サンプルではなく,基板上の脂質膜を対象としている.このため基板上の脂質膜の流動性(粘性)や相状態を解析する手法を確立する必要があり,この解析法に関する研究を実施した.その結果,脂質膜を平面基板上に固定化することに成功するとともに,基板上脂質膜の粘度の解析法に成功した.また,この手法を用いて,懸濁液サンプルと基板上脂質膜の粘性の温度依存性を比較した結果,ほぼ同様の挙動を示すことを明らかにした.この結果より,平均として膜の流動性を維持して基板に固定化可能であることを見出した.また,温度と流動性の相関関係より相転移温度に関して評価した結果,懸濁サンプルと基板サンプルの相転移はほぼ同様であることを明らかとした.また,次年度以降の計画実現のため,平面膜解析用のデバイス設計を行うとともに,わずか数分子の検出を実現するために二光子顕微システムおよびSHG顕微システムを解析デバイスに組み込み,これらが使用可能であることを実証した.
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