研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
23H04076
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
朴 昭映 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (10628556)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アミノ酸 / 核酸 / 免疫タンパク質 / 核酸医薬 / RNA |
研究実績の概要 |
オリゴヌクレオチド治療剤は、活性物質を見つけるために複雑な探索過程が必要だった既存の創薬プロセスと比べ、遺伝子配列や機能を基盤として治療薬を設計することができる。そのため、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)やアプタマー(aptamer)、免疫活性制御物質(immunomodulating agent)など核酸オリゴマーに基づいた次世代分子標的薬の開発が活発に行われている。本研究では、アミノ酸と核酸を融合したバイオハイブリッド分子 (Amino acid-Nucleic acid Hybrids, 以下ANHsと表記) を設計・合成し、免疫反応を制御するタンパク質を標的とするイムノモジュレーター(Immunomodulator) を開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、 アミノ酸を導入したRNA分子を設計し、免疫反応を制御する核酸分子としての評価する実験を行った。Regnase-1 は、ステムループ RNA や一本鎖 RNA を分解するエンドヌクレアーゼとして、炎症反応に関与する転写産物の制御に重要な役割を担うタンパク質である。Regnase-1をターゲットタンパク質として選定し、以下のように研究を行っている。 1) アミノ酸-核酸ハイブリッド分子の設計と合成:Fmoc基で保護されたアミノ酸とD-スレオニノールの縮合反応を行い、アミノ酸としてリシンを導入したホスホロアミダイトを合成した。ホスホロアミダイト化した後、合成機に導入することで、オリゴヌクレオチドが自動プロセスにより合成できた。 2) Regnase-1を標的とするアミノ酸-核酸ハイブリッド分子の開発:リジン残機は、Regnaseの活性部位に存在するアスパラギン酸との相互作用により炎症性mRNAの分解を阻害することが考えられる。今回は、先行研究で報告されているIL-6 RNA配列を選択し、それをリジン残基で修飾したリシン-核酸ハイブリッド分子を合成した。Regnase-1との結合性を評価するため、RNA切断基質を用いてRNA切断阻害能を調べた。その結果、リジン修飾RNAはRegnase-1と結合し、FAM-RNAのRNA切断を阻害することがわかった。しかし、ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、明確な変化が得られなかったため、その原因を調べている。
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今後の研究の推進方策 |
最近、マイクロスケール熱泳動法 (Microscale Thermophoresis, MST) を行い、Regnase-1タンパク質とRNAの相互作用を調べたところ、先行研究で報告されたRNAアプタマー配列が、既知のRNA切断基質と競合的にRegnase-1と結合することがわかった。今後は、RNAアプタマー配列にヒスチジン残基を導入したヒスチジン-核酸ハイブリッド分子を合成し、Regnase-1への結合性を評価する。ヒスチジン残基はRegnase-1の活性部位 (PIN domain) のMg2+の配位との相互作用によりRNA切断反応を阻害することが考えられる。また、分子モデリング研究によりアミノ酸修飾RNAとRegnase-1の複合体の分子間相互作用を予測可能なモデルを構築する。
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