マイクロ波によって誘起されるイオン振動に基づく「動的超秩序構造」の学理開拓に向けて、結晶性多孔体ゼオライトの細孔内に導入した様々な金属イオンとマイクロ波の相互作用を多角的に評価した。特に、一価カチオン(In+、アルカリ金属イオン)はマイクロ波と強く相互作用し、高い効率で加熱された。放射光X線分析を行ったところ、ゼオライト細孔内でこれらのイオンがマイクロ波によって選択的に振動誘起されたことによる、特異的な変異が起こることを明らかにした。このようなマイクロ波によるイオン振動の度合いは、ゼオライトの細孔径に大きく依存することが分かった。MD計算などを通して、振動イオンとゼオライト細孔壁との衝突によって、これらの加熱挙動および振動運動挙動が制限されるため、細孔径による依存性が出ることを明らかにした。このようなマイクロ波による選択的なイオン振動場によって、CO2の水素化反応が見かけ温度で推定されるよりも高い速度で進行した。すなわち、マイクロ波によってイオンが選択的に振動することで、「動的超秩序構造」を反応場とする特異的な触媒反応を実証した。
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