研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04127
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 吾朗 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (30218193)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 拡散蛍光トモグラフィ / 光拡散方程式 / 時間分解計測 / 光渦 / 散乱特性 |
研究実績の概要 |
拡散蛍光トモグラフィにおける再構成画像を改善するために蛍光検出の感度、蛍光の時間応答関数の数学的解析、さらに励起光の散乱体透過深度向上のための光渦の散乱体透過特性に関して検討した。 最初に、過去行った生体組織模擬試料に埋め込まれた蛍光体の測定データを解析するために解析モデルを構築した。検出深さ感度を定量的に評価するために測定データの分散に注目し、それに対する蛍光信号の大きさを持って評価した。その結果、外来光の存在下では外来光に基づく検出光ゆらぎが検出可能深さを決定している主なる原因であることがわかった。それをもとに入射受光間距離の最適値を評価し、結果を論文としてまとめ投稿中である。 蛍光の時間応答関数を用いた画像再構成において、時間応答関数を特徴づけるパラメータとして何を用いるべきかと言う議論があるが、最もノイズレベルが低くなる時間応答関数の最大値を与える時間(ピーク時間)がロバストなパラメータである。そこで、蛍光体を点とした時のピーク時間と蛍光体の位置に関する関係を数学的に解析した。蛍光の時間応答関数は励起光蛍光それぞれの光伝搬関数の畳込み積分で表現されるが、それからピーク時間を求めるために蛍光体深さを十分深いと考える極限で考え、界面のFresnel反射を考慮した新しい解析式の導出に成功しその結果を論文として発表した(Eom et.al. 2024, Shuli et.al.2023)。また、蛍光寿命を考慮した解析式の導出の試みを進め、現在投稿論文としてまとめている段階である。 光渦の散乱体伝搬特性が異なることがこれまで報告されているが、その透過特性を確かめるために液晶retarderを利用したLaguerre-Gaussモードの生成光学系を構築し、イントラリピッドを散乱体とする溶液での散乱透過パターンを計測した。その結果は報告結果と異るため詳細な検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光渦生成のための装置の購入やセットアップに時間を要したため、本研究課題の内容のうち拡散蛍光トモグラフィに関連する基礎研究を重点的に進めた。それらの研究を論文としてまとめる作業に時間を有したため、光渦の散乱特性評価に関すた内容の研究について進行がやや遅れている。そのため全体としてやや遅れていると言う評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在、光渦の生成は透過型液晶retarderを用いて生成しているが、光渦自体の評価ができていないため、干渉計を組み合わせその評価を行いたい。またよりフレキシブルに波面を制御するようにLCOSを用いた光学系に変更して行く予定である。 散乱特性評価は、これまで1cmの小さな試料容器を用いて実験していたが、空間的に大きく広がることを考慮しより大きな試料容器に変更し、それを用いて散乱体濃度を変化させながら散乱光強度の空間パターンを計測する予定であり、その結果過去の文献の結果と比較考察できるはずであり、まずは国内の学会での発表を目標にする。 2023年度の成果に関する論文発表とともに、国際会議での発表を計画しており、それにより本研究を対外的に実績をアピールする予定である。
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