公募研究
脳内で“幸せ”という感覚は何に起因するのであろうか? これまでに幸せを感じると脳の中では、オキシトシンと呼ばれる“幸せホルモン”が増加することが示唆されてきている。しかしながら、既存手法を用いて、生きた動物の脳内のオキシトシン動態を精度よく計測することは困難である。そこで、脳内におけるオキシトシン動態を蛍光イメージングにより高感度測定のための新規技術開発を行ってきた。オキシトシン受容体の細胞内ドメインにGFPを挿入したキメラタンパク質にランダム変異を導入し指向性分子進化を施すことで、オキシトシン結合により約8倍蛍光強度が変化する世界初のオキシトシン蛍光センサーを開発することに成功した。本蛍光センサーを、アデノ随伴ウイルスにより生きたマウス脳内に導入し、ファイバーフォトメトリー法によるin vivo脳内オキシトシン動態測定を行ったところ、脳内においてオキシトシンは刺激の種類や行動パターンに依存して多種多様な応答を示すことが明らかとなった。次なる課題は脳内で変動するオキシトシンの信号がどの細胞種が読み取っているか? という謎を明らかにすることである。これまで様々な脳部位の神経細胞が脳内のオキシトシンシグナルの主要な標的として想定され、研究が繰り広げられてきた。しかしながら近年、グリア細胞もオキシトシンのデコーダーとなる可能性が示唆されてきている。そこで本研究では、脳内にオキシトシン刺激が入力した時に脳内のどのグリア細胞の応答を示すかを明らかにすることを目指した。
2: おおむね順調に進展している
予備的な実験として、脳内にオキシトシンを付加した時の、グリア細胞の活性化を解析した。すると一部のグリア細胞において活性化マーカーであるc-fosの発現が上昇することが明らかとなった。c-fos陽性細胞がどのような細胞集団であるかは解析中である。
今後は光遺伝学/薬理遺伝学や生理的な刺激を与えた時に同様の脳内反応が見られるかを明らかにしていきたい。また、オキシトシン刺激を受容したグリア細胞から神経細胞に対しては様々なフィードバックシグナルが送られていると推測される。新たな可視化プローブを開発するなどして、オキシトシンを基軸とした神経-グリア間相互作用の実体に迫っていきたい。
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PLoS ONE
巻: 18 ページ: e0288930
10.1371/journal.pone.0288930. eCollection 2023.
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