大脳皮質体性感覚野(S1)5層錐体細胞のapical dendriteでは、思春期にスパイン数が劇的に増加することを見出しており(hotspotとよぶ)、本研究では、ここにどのような入力が集積しているのか解析を行った。まず、S1にAAV-retroを感染させ、S1に入力するニューロンを全脳スケールで同定した。同時にAllen Brain Atlasのデータも参照した。次に、これらの候補領域にAAV-syp-mRubyを感染させ、S1のL5錐体細胞hotspotにシナプスを形成する頻度を定量的に解析した。具体的には、syp-mRubyとL5錐体細胞を標識するThy1-YFP-HマウスのYFPシグナル、anti-Homer1抗体のシグナルの全てが重なる点をシナプスと判断し、定量を行った。さらに、解析した体積中にsyp-mRuby密度に基づき、どのくらい有意にシナプスが集積しているのかを計算することができた。まだ定量は進行中であるが、皮質の特定の領域と視床の特定の領域からの入力がhotspot領域に高確率で集積することがあきらかになりつつある。今後は、これらの領域に着目し、実際に思春期前後で軸索投射・シナプス形成密度に変化があるのかについて検証する予定である。また、蛍光バーコードベクターを用いることで全脳スケールの解析を行う予定である。 また、hotspot形成が行動に及ぼす影響を明らかにするため、思春期にPLX-3397処理を行い、ミクログリア除去によってシナプス形成を阻害したマウスにおける行動解析を行った。具体的にはプレパルス抑制や作業記憶のテストを行った。現在データを解析中である。 この他、L5ニューロンのカルシウムイメージングや電位イメージングを行うため、必要なAAVの作製を行った。
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